ケイスケ

聖なる犯罪者のケイスケのレビュー・感想・評価

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
4.5
レイティングのR18+で抵抗感ある人もいるかもしれないけど、直接的なシーンは無いのでぜひ多くの人に観てほしい一本。

少年院に入っているダニエルは前科がある人間は聖職に就けないと知りつつも、神父になりたいと願っていた。無事に仮釈放の身となった彼は田舎の製材所で職を見つけ、たまたま立ち寄った教会で新任の司祭に間違えられる。司祭の代理を命じられたものの、およそ聖職者らしからぬダニエルの態度に村人たちは困惑するのだった。

…というストーリーなんだけど、村人たちはそこまで困惑をしてるように見えないんですよね。中盤の「すべてを外に吐き出すんだ!」とダニエルがオーバーリアクションするところはちょっと引いてたけどね。これが実話を基にしているというのが凄いですね。

本作は全体的に青みがかった冷たい色調にくわえて割と淡々と話が進むのですが、とにかく画面から目を離せない。観てる側が先を知りたくなる話作りが非常に上手いです。なんといってもダニエルは仮出所した犯罪者であるため、神父に成りすますというバレるかバレないかのサスペンスが興味を引く大きなポイントですね。

それに加えて舞台の村で起きた凄惨な事故を巡る話は、何が善で悪か、赦しとは何か、と言った問いを観客に投げかけてくるため終始考えさせられる。そしてこのダニエルの偽神父を村人が受け入れていくプロセスもとても丁寧で、ダニエルと村人のやり取りに時折、涙させられるほど。子供たちから貰ったイラストはそりゃ泣くわ。

笑えるシーンも結構あります。ちょっとここは笑いのポイントがズレてるかもしれないんだけど、序盤のダニエルが神父になるまでの強引さですよね。「そんな都合いい話あるかい!」と思いましたが、別にここを丁寧に描くのが話の主体ではないので問題なし。あと祈りで言葉につまったダニエルが「沈黙もまた祈りである」ってごまかすとこ好き。なんかそれっぽい説得力あるよね笑。

ここは評価ポイントが別れそうなんですけど、予告ではダニエル役のバルトシュ・ビィエレニアがかなりイッちゃってる目をしていたので、もっとブッ飛んだ神父を演じるかと思いきや、基本的には常識人で物事も多面的に見れる人なんですよね。少年院で信仰に目覚めたのかもしれないけど、そこの描写はちょっと薄いかな。でもこの映画、個人的にすっごく好きです。ラストの切れ味とダニエルの迫真の表情もとにかく最高でした。傑作!