マンボー

ようこそ映画音響の世界へのマンボーのレビュー・感想・評価

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)
3.7
これは大学の映像学科や、専門学校の初めの講義で見せられる、キャストが豪華で出来がいいやつ(笑)

エジソンが映写機と蓄音機を発明して、映像と音響の歴史がはじまったところから、映画の都・ハリウッドを中心にして、連綿とその進展と停滞を経た進化の歴史を語ってくれる。

単純に古い映画の一部分が鮮明な映像とよい音響で、大画面で観られて嬉しかった。西部戦線異状なし、市民ケーン、アラビアのロレンス、北北西に進路を取れ、地獄の黙示録、もうそれをそのまま、また観たいぐらい。

さらに、モノラルとステレオ、サラウンドの違いを丁寧に説明していただける親切設計も、物語偏重のオールドハリウッドタイプで音響に無知な自分としてはありがたかった。

古い音響や、制作手法から抜け出せなかったハリウッドが、コッポラやルーカス、スピルバーグら若手たちのらつ腕によって、帝国の威勢を取り戻し、現代に至るのはちょっと映画の好きな人なら大体知っていることだし、最近はテレビ番組でも映画音響が取り上げられることがあり、それほど新しい話や、特に深みのあるエピソードがあったわけではないが、総合的な映画音響の歴史を網羅してなぞるだけでもこれまでにない試みで、映画の世界の教科書のひとつになりえるもの。

最後には、働き過ぎを戒めて、ワークタイムバランスの大切さまで説いてくれる本作は、やはり血気盛んな学生や、寝る間を惜しんでバリバリ働きたくて仕方ない自虐的な、いややる気あふれる若者に観てもらうことを想定した作品らしく、テンポがよすぎて息つく暇がなく、よく働きよく眠る若者の眠気対策も万全だった気がする。

でも本当に正直に言えば、あまりにかの国の西海岸の固定視点で物足りなかった。でも、いつになく土曜日とはいえ雨予報の映画館は老若男女で埋まっていました。このご時世、劇場が盛況なのはすばらしいこと!