平野レミゼラブル

白頭山大噴火の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

白頭山大噴火(2019年製作の映画)
3.7
【火山の噴火を核爆発で止めろ!!90年代ハリウッド大作の大味さを今こそ楽しむべし!!】
白頭山大噴火によって朝鮮半島がヤバイので、北朝鮮から核爆弾を盗んでそれをマグマ溜まりで爆発させましょう……というあらすじの時点でどうかしているレベルで大味な作品であり、実際の中身も90年代ハリウッド大作ばりにどうかしているレベルで大味だった作品。
正直なところ、核に対する認識がキノコ雲をバックにシュワちゃんが呑気にキスする『トゥルーライズ』から全く変わっていないのは心底どうかと思いますが、あのマ・ドンソクに自信満々に断言されてしまうと「ま…まああんたほどの実力者がそういうのなら………」って気持ちになる不思議。というより、核で止めるのが隕石じゃなくて噴火になっただけで、ほぼ『アルマゲドン』みたいなものなんで細かいこたぁいいんだよって気持ちで楽しむに限ります。

実際キャストが韓国スター勢揃いで超豪華というほかないんですよね。イ・ビョンホンにハ・ジョンウにマ・ドンソクですよ!?
日本で例えるならキムタクに西島秀俊にマ・ドンソクが共演する映画ですよ!?
マ・ドンソクは日本にはいねェよ!!というか全世界で替わりになるヤツがいねぇよ!!
ギリでロック様。

本編のほとんどは火山の噴火を止めるために北朝鮮に潜入した工兵隊の臨時隊長のハ・ジョンウと、北で捕まっていたスパイのイ・ビョンホンが協力して核爆弾を奪取するミッションに勤しむ内容なのでアクションは豊富です。
ド派手な銃撃戦や、火山活動による余震で起きる地殻変動やら火山弾を避けるカーチェイスなどは韓国のお家芸でもあるため中々見応えがあり、ジョンウとビョンホンも所々キレキレな動きぶりを見せてくれます。

むしろこれだけ韓流スター勢揃いな中で、我らがマブリーがNO暴力を貫く地質学者というのがかなり異色です。戦地で何度も「こんな時にマブリーがいてくれたら…!」と歯噛みする場面がありましたが、本作のマブリーはマブリー史上最弱と断言しちゃって良いほどに非力なマブリーなので「いたところで…」過ぎます。なんせ机の引き出しを開けることが出来ないくらいに非力!!嘘だろ…!マブリー……!!その筋肉は飾りかい……!?
『白頭山大噴火』におけるマブリーは地震が起きた時に机の下に退避した際に体の半分以上が隠し切れていないサマを拝んで「カワイイ〜💕」と癒されるに限るか弱い子熊ちゃんでしかありません。
ただ、いつもの暴力性はないにしろ「火山の噴火を止めるために核を使いましょう!」という暴力的理論は唱え、かつなんか知らんが妙な説得力はある…!!と思わせるだけのパワーがあるので、この起用方法はこれはこれでアリとも言えます。

あと、ハ・ジョンウも『PMC:ザ・バンカー』で見せたシビアな戦闘のプロって印象が強かったんですが、その印象を塗り替える程にへっぽこな役回りでしたね。
なんせ本業は爆発物処理などの工兵であり、主な役割はミサイルからの核の引き離し&白頭山への爆弾の設置・起爆だったにも関わらず、火山灰トラブルによる輸送機の墜落で実行部隊が全滅した為、戦闘まで急に任されてしまうのですから。隊員ですら銃を撃つのは2年ぶりという程に戦闘が専門外で、二重スパイの危険性があるから慎重に扱えと言われたイ・ビョンホンが参謀を務める羽目になるレベルのgdgdぶり。

そして、イ・ビョンホンは案の定二重スパイで、裏で良からぬことをやらかしてハ・ジョンウが裏をかかれ、それを追ってのすったもんだを繰り返すという様子がコメディチックに展開されるので話の進みは相当に軽やかです。むしろイ・ビョンホンとハ・ジョンウの関係性はトムとジェリーを思い起こさせるスラップスティックなもので、二大スターにこれをやらせる時点で豪華というか豪快というか……
というより、白頭山の噴火時間というタイムリミットや、核のトンデモ利用に気付いて「やめろや!」と真っ当な反応する米軍の妨害とかもあるにも関わらず何やってるんだ……って気持ちは観ていて結構強いです。そんな調子なので、ディザスタームービーとしての緊迫感は無きに等しく、その点は割とどうかと思わなくもない。

ただ、本作を90年代大味大作映画として観るならば、むしろこの軽みはアリ!と言わざるを得ないです。
本作の物語展開はあらゆる無茶無法、ご都合展開、感動的な場面で壮大な音楽が流れる大仰さ諸々が罷り通るレベルにガバいです。ハリウッドが平成の時代に棄てていったものを、韓国映画界が丁寧に拾い集めて令和の時代で大真面目に展開している一種のスクラップ・アンド・ビルドと言えるでしょう。とことん時代に逆行しており、批評家受けはまずしないと言って良い代物です。
ただ「あの時代のあの大味なエンタメ作品は面白くなかったのか?」と聞かれた場合の僕の答えは「NO!!」なんですよ!!確かに大味すぎて今見返すと失笑しちゃう場面も多いんだけど、こう豪華なメンバーをドーン!!と集めて、ド派手なことをドカーン!とやらかして、バーン!!と解決してしまう単純明快さをこそ楽しみたいって時は確かにある。そういう大味エンタメを現代の韓国映画界の持つスター、CG技術、アクション全てを潤沢に使ってやってくれたとあれば、こちらはオールオーケーの姿勢で受け止めに向かっちゃうんですよ!!

んで、実際に受け止めたそれがハリウッド大作にも匹敵する映像表現であったならば、それはもう完全に“そういうもの”として最後まで楽しめる立派な超大作なのです!
冒頭から火山活動の影響による大震災でビル街が倒壊するCG表現からして大迫力で出し惜しみしてきません。ハ・ジョンウの運転する自動車がトラックの上を走った!?と思ったら地盤沈下して落ちていくトラックを足場にして走っていたなんて表現は唸らされました。
その後に繰り広げられる銃撃戦やカーチェイスも「熱探知をいかに回避するか?」とか「核爆弾のタイマー」の有効活用など、大味なりにしっかり頭を使った展開なども織り交ぜてくれるのでちゃんと見応えがあります。
イ・ビョンホンとハ・ジョンウのドタバタっぷりや、そこから徐々に深めていく関係性の在り方なんかはベタではありますが、こういうのをこそ見たかったものでもある為、文句は言えまい。
まあ、あまりにも大味すぎて結末まで先が見えてしまうんですがそこはご愛嬌。ある意味そういう部分も大作特有の様式美であり、最後まで楽しむが吉なのです。

思うに最初に「火山の噴火を核で止めよう!」という大味さを提示して、リアリティラインを最低限まで落としていたのが良かったのかなァ……あののっけからの絶対大味宣言によって、物語の全てを骨の髄まで楽しめる姿勢に移行できたというか。
そう考えると、割と本作はテクニカルな手法を使ってきたのかもしれません。まあ普通にそこは考えすぎな気がしますが……

オススメ!