horahuki

ガール・オン・ザ・サード・フロアのhorahukiのレビュー・感想・評価

3.9
行動には結果がともなう!

詐欺に浮気にアル中と超ド級クソ野郎な主人公は、妻の妊娠を機に大きなお家にお引っ越し。新居で心機一転セカンドチャンス!ダメな自分にサヨウナラ!ってな具合で、心を入れ替えようと頑張った末に、一皮剥けてなぜか「女」になるゲテモノホラー。

内容はそんな感じでだいたい合ってるはず!🤣

人生の再起をかけた引越先で怪異に襲われるという、手垢にまみれた近年の家系オカルトホラーの定石展開に、プンプン臭ってくるようなキワモノ要素を盛り込むことで「生理的不快感」と「ホラー的楽しさ」の絶妙な混合を実現。既存の枠組みを徹底的に意識した上での王道とそこからのゲテモノ的逸脱を上品な映像によりまとめあげた、言ってみれば「下品」を「上品」に撮ったユニークで新鮮な作品。

その王道と逸脱のバランスの良さに、ホラー映画製作に携わってきたスティーブンス監督のホラーへの誠実さ(と遊び心)を感じた。本作は、『死霊館』シリーズを筆頭に10年代に人気を博した定型を良い意味で踏み台にし、新たな流れを生み出すようなパワーを纏っているような気がする。思えばスティーブンス監督が製作として関与していた『喰らう家』も同様の意図を読み取れるものだったし。

主人公一家が買った家はボロボロで、床には白濁液の水たまりと誰かが使ったコンドーム、壁からは黒い粘液状のものが垂れて穴だらけ、天井板は外れている。なんで買ったの…😅しゃーないから先に家に着いた主人公は後から来る奥さんのためにオンボロ新居の修理に取り掛かる。

この家自体が主人公が持つ無意識下での性衝動をわかりやすく象徴したもの。修理しては壊れ、その度に中から漏れ出てくるものに上から蓋をする。そんなことを繰り返す主人公の行動は、塞いでも塞いでも溢れ出てくる自身の無意識下の欲望を意識的に封殺しようと奮闘する自己の内面との戦い。抑え込もうとする道具がお粗末なのは、主人公の認識の甘さを物語っている。内面から溢れ出てくるものが基本的にドロ〜リとした白濁液だというのがオスを感じさせるね!🤣シャワーとか吐きそうになるキモさ!

そして対外的な意味合いだけではなくて対内的にも家の門番としてワンちゃんが配置されるのも可愛くてナイス👍でも犬好きの方は見ない方が良いかもしれません…😱

遊郭的跡地とそれを抑え込む主人公の行動は、どこかパウエル&プレスバーガーの『黒水仙』を思わせる。壁の中に負を押し込むのはポーの『黒猫』のようで、同様にクレイヴンの『壁の中に誰かがいる』も想起させる。そして、新居に到着した際のカメラワークはどことなく『死霊館』シリーズへの目配せのようにも思えるし、小中理論とまではいかないけれど画面端に見切れる朧げな異物の多用がJホラーへのリスペクトも感じさせる。クライマックスの「実はこういうことやってん!ドヤッ!😉」っていう種明かし的な語りは鬱陶しかったけれど、かなり好きな作品だった!
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