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花束みたいな恋をしたのYACCOのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.5
冒頭のエピソードからやられてしまった。イヤフォンのLRについて同じように思っている人がいたなんて。そんなわけであっという間に坂元脚本に落ちてしまった。
その後出てくるエピソードや言葉の数々も、そしてふたりの心の変遷も、懐かしいやら、切ないやら、なんだかちくりと痛いような。オブラートに包んで心の奥底にそっとしまっておいた何かが静かにだけれどみていて揺さぶられた。

主役のふたりのあくまで普通な感じがとても良い。普通に調布の街にいそうな男女の等身大の恋愛だから、見ている側は入り込めるのだと思う。(いや、菅田将暉も有村架純もかっこいいし可愛いことは言うまでもないのだけれど)

ささやかな夢と希望に満ちた学生時代、大学を卒業したモラトリアム時代、そして、社会人となり徐々に何かが変わっていく描写は、とても自然で、かつ見ている方も一緒にその時を過ごすことができるものだった。何より、このふたりを見ていてどちらが悪いとか、安易にすれ違ったとか、そういったものは感じられない。ふたりはお互いを思い、一緒にいられる時を大切に過ごしたことが伝わってくる。だから、ふたりが行き着くところも必然だったのではないか、とすら思える。それが、鑑賞後の切なくも温かい気持ちに繋がっていくのだろう。

それにしても、坂元脚本は痛いところをついてくる。でも、今作はその痛みがどこか甘酸っぱい。この映画は、現在進行形の恋愛をしている若者だけではなくて、ある時期あんな(花束みたいだったかはわからないけれど)恋をしたあなたにも響く映画なのかもしれない。
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