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カモン カモンの小のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.5
子育て、家族関係について、多くの人が時間をかけて経験、学んでいくことを効率よく描いているような気がする。子育てを終了したオジサンにとって刺さること、ハッとするようなことがなく、正直言うと退屈だった(強めに残っているのは「カモンカモンカモン」のシーンくらい)。配信で初めて観たつもりが、映画館で観ていたことを忘れていた。

子育てを通じ人生を描いているかのような本作は、良作であるとは思うけれど面白くはない。テキストが多く頭が追いつかない。自分なりの解釈は出来そうだけれど、マイク・ミルズ監督が何を考えているのか気になるのでインタビューをググってみた。

<(「もう失敗はできないぞ」と焦っていた時期で)そんなとき、『Lovefilm』をきっかけに、「自分自身について本当の意味で正直になり、自分の人生に起きた“私固有の出来事”をシェアすれば、人々とつながることができる」というプロセスにすべてを懸けようと思ったんです。><(『人生はビギナーズ』は)日本の皆さんにとっても、たとえば『スター・ウォーズ』シリーズみたいな超大作を作るより、よほど心に響くんじゃないかと思うんです。そうでしょ?(笑)>
(https://www.pintscope.com/interview/mike-mills/)

<私たちの心の宇宙、私たちの内面の世界、私たちの日々の感情──それらがどのように構築されて、どのようにして自分の感情を理解して、他人に表現するのか。それが私の主だった関心事で、私の映画すべてに共通するテーマといえば、他者との関係の中でどのように自分自身を理解していくか、ということだと思います。>
(https://fansvoice.jp/2022/04/27/cmon-cmon-mills-interview/)

(本作について)<私とホッパー(注:監督の子ども)の話を、ホッパーのプライバシーを守りながら語るにはどうすればいいか何年も考えあぐねていたところ、あるとき「主人公を子どもがいない伯父さんにしよう」と思い付きました。>
(https://ginzamag.com/categories/interview/282359)

<自分のことや自分の周りの人々を題材とした映画ばかりを作るのは自己中心的なのではと感じたりもしますが、でもその方が、きっと皆さんの時間を無駄にすることがないと、私は賭けています。>
(https://fansvoice.jp/2022/04/27/cmon-cmon-mills-interview/)

<私がなんで自分の映画によく、他の人が書いた本のテキストを引用するのかというと、「私たちはみんな人との関係性の中で、自分が何者かを学ぶ」と考えているからです。>
(https://www.pintscope.com/interview/mike-mills/)

人は1人で部屋に閉じこもって考えても自分が何者であるかわからない。理解不能な他者(他者が作成したメディアも含む)との関係において、自分を理解する。

だから、監督は自身における他者との関係性をシェアする映画を作り、観客とつながることにかけている。つながることができた観客は監督の映画を通じ自分が何者かを学ぶ。

本作を観ながら子育ての記憶が蘇ってきて、「ああ、こうだったよなあ」とか「自分はこうしていたなあ」とか思っていたけれど、これも学ぶということかな。また、自分がどういうことに感動または退屈するのか、ということも自分が何者かを学ぶことかもしれないね。
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