たにたに

アントマン&ワスプ:クアントマニアのたにたにのレビュー・感想・評価

3.7
【量子世界は閉ざされた世界なのか】2023年23本目

"アントマン"シリーズ第3作目となる今作では、謎に包まれていた量子世界を舞台とし、今後のMCUのキーとなる敵役"カーン"との対峙を描きながら、マルチバースへのお膳立てをするMCUフェーズ5の始まりを告げる記念すべき作品である。

これまでのアントマンシリーズでは、物理法則を無視した縮小という科学を用いた小さきヒーローの新鮮さと、人間では体験し得ない世界観をコミカルに描き、目で見て楽しい想像性高い映画を作り出してきた。

今作では、誰も見たことのない量子世界を舞台とするため、そこに住まう様々な生物の造形へのこだわりを見せた。ブロッコリー人間、スライムのような生き物、足のある家。しかし、スターウォーズのカンティーナのようなバーも出てきて既視感があり、SF映画としてポジションをとる上で試行錯誤しているようにも見てとれた。

アントマンはMCUシリーズの中でも、家族物語をテーマとしている部分があり、今作でもスコットとキャシー、ワスプとホープ、という親子の関係性を絶妙な距離感で描いている。

元犯罪者のスコットは、キャシーの幼少期に常に側で成長を見届けられなかったし、
ワスプは量子世界に閉じ込められていた母親ホープと再会して間もない。
彼ら親子の関係性はこれから構築されるものであり、それが今作のテーマともなっている。

対して最大の敵カーンにおいては、どこか孤独を抱えているように思いますし、彼の持つ、征服という原動力がどこから生まれてくるものなのか、今後押さえていきたいところです。
ドラマ"ロキ"で登場した"在り続ける者"もカーンであり、カーンという人物が様々な時間軸の中で変異体としてお互いに存在を認識している。
多重人格ということでもなく、それぞれのカーンがそれぞれの考えを持つ。
カーンがアベンジャーズと今後対峙していく中で、彼がどのように他者を理解し、そして自分理解を深めていくかがカーン攻略への道筋となりそうだ。

カーンの能力もまだ未知数。フォースの使い手のような演出もありましたが、サノス以上に人間味を帯びた彼がどのようにアベンジャーズと関わってくるのか非常に楽しみです。


映画としては平凡かなと思います。ストーリーの新鮮さはありません。王道を貫いたなという印象です。

カーンやホープが閉じ込められていた量子世界。過去にはスコットも閉じ込められていました。ストレンジのように現実世界へのホールを作って、最も簡単に故郷へと戻る主人公達。そこは今やもう檻のような場所ではなくなったのではないでしょうか。
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