きまぐれ熊

アントマン&ワスプ:クアントマニアのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

3.4
あれ、今回普通にあかんな...。かなり期待してたんだけど。

致命的なのはないけど、ちょいちょいネタバレありです。あと今回は否寄りです。



プロット的にはあまり捻りがなかったけど、盛り上がる要素はいくつかあったはずなのに活かさず終わってしまってる。
ジャネットとカーンの関係に対するハンクの関係性との着地点もないし、カーンとのラストのタイマンはアベンジャーズとしてすげー意義のある戦いなのになんか盛り上げもせずスッと終わっちゃうしスッと帰れちゃうしで厳しい。

ゲリラと共闘して革命を起こす構造も数多ある王道展開なのに、差別化できそうな量子世界独自の文化とか歴史とか一切触れないので感情がめっちゃ薄い。あの女戦士だけでももっと掘り下げてくれよ。キャシーとの絡みで面白いセリフ引き出せそうなのに。

キャラに対する焦点もかなり曖昧で、ピム一家だけでもとっ散らかってる。ジャネットとキャシーの魅力を引き出しきれてない印象なのが痛い。
ジャネット視点だと悪い事してないんだけど、魅せ方が悪くてすげー嫌なおばちゃんになってしまってる。
キャシーはキャシーでこれまでのシリーズで積み重ねてきたものからの引用もないので、唐突なキャラ変に説得力が感じられない。せめてスコットとのエピソードとかなんか無かったか。

量子世界のビジュアルは綺麗でクオリティが高くはあるけど、文化に対する言及が無い
スペースオペラっぽくなってる世界がどのくらいカーンの影響なのかも掴みきれないため、ゲリラ戦士たちの蛮族みたいなスタイルも相まって平均的な水準の生活感が見えないので入り込めなかった。
でもクリーチャーデザインは常識が通用しなさそうなので全体的に良かった。


個人的に期待していたものとしてはマルチバースのハードSF的な視点からの世界観と、ファミリードラマの掛け合わせだったんだけど、うまく噛み合わせられなくて失敗してますね。

そもそもマルチバースに言及する必然性のないストーリーだったので、もっと切り離しちゃって量子世界が「檻」である事を強調する形にすれば、脱出劇としても分かりやすかったし、ラストのタイマンも活きたのではって思う。あの世界で革命できるかどうかなんかより無事に家に帰れるかどうかの方が重要なわけじゃん。
そこに人助けにこだわるキャシーをやろうとしたのは欲張り気味だったし、やるにしてももうちょっと地に足ついた感じでやってくれないと、ただでさえ入り込みにくい世界観だったので革命成功されても全体的に印象が軽いんだよね。お陰で終盤のモードックもお前どしたん?って感情になってしまった。
近い構造であるガーディアンズ一作目の方が観客の感情コントロールを上手いことやれてるので後追いでこの見せ方は厳しい。

どこがダメっていうより、なんか全体的に満遍なく足りてない。コロナ禍直撃世代だし、時間的にも練りきれなかったのかなぁって印象。
コロナといえばロケが異様に少なかったのも特徴的。冒頭と、量子世界レストランくらい?ほぼ全編CGなんじゃないかこの映画。
世界観の実在感を感じにくかった要素としてロケの影響は大きいと思う。

ちなみにSF的な面での面白みはマジで皆無だった。
いっぱい増えるアントマンと一致団結するくだりは良かったんだけどね、ホープもしれっと同じことやってるのが、ちょっと薄いなと感じでしまう。
今回全体的にホープの扱いを持て余してるんだよね。

あと捕まって→兵士の隙を突いて脱走パターンの天丼が多過ぎる。これはシンプルにあかん。

あと残念ながらギャグも滑ってたね...。完全にポールラッドの顔芸頼りになってて掛け合いによるギャグシーンとして成立してない。脚本もだけど、やっぱあの3人組がおらんとユーモア足りないっす。

うーん、良いとこ探そうと思ったけど、各要素に独自性が全然なくてクリーチャーデザインが凄く良かった以外にあまり見当たらないなぁ。ジョナサンメジャースの演技はとしても良かった。今回のカーンはオーラのある小物って感じで個人的には好きなタイプの悪役だ。

いやぁ、これでみんなベタ褒めしてたらどうしようかな。個人的にはダークワールド&アイアンマン2と並ぶくらい薄かったです。
フェーズ4以降、やっぱ良くも悪くもコミックっぽくなってきてるなぁ。
漫画なら連作なのもあるしこの薄さでもテンポで気にならないだろうと思えるけど、映画だとやはり塊としてのまとまりは欲しいっす。
きまぐれ熊

きまぐれ熊