NUZOO

プロミシング・ヤング・ウーマンのNUZOOのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ポップさを失わずにシリアスなテーマを描き切っていて、内容からも女版『ジョーカー』的な作品だと思った。

オープニングのダサい男たちの腰つきからしても、この映画は男女の表象の反転や、差異の強調を一貫して見せているところが面白い。

年齢不相応に(キャリー・マリガンは35〜6歳らしいしめちゃくちゃかわいいけどどうみても30歳には見えない)子供っぽい装いのまま実家で過ごしている主人公の痛々しくかわいい姿が印象的。親から与えられたであろう服やピンクのグッズ、ロココ調の真っピンクな部屋など、子供部屋の延長のまま暮らしている「子供っぽさ」は、後々出てくる男たちの「子供っぽさ」との対比にもなっていて、かつ男たちのそれに比べ社会的に許容されづらいものに見える。
彼女が前途有望な道を断たざるを得なかった過去がわかるとその幼さはより悲痛なものに見えてくる。

男女の社会問題に警告という形で抗議する行動をとる主人公は狡猾で勇敢だけど、端々に見える怯えからもリスクの大きい行動であり恐怖をともなっていることがわかる。さらに言えばその抗議もやはり子供っぽい手段だ。
そのあたりの違和感が、抗議行動の爽快さとバランスよく配置されるところも見やすくて上手い(『スーパーバッド』のマクラヴィンがいいコスさ出してた)。

中盤から始まるラブロマンスがまた見事で、彼女の現状を未来に開き、ケアするような恋愛に大層素敵な気持ちにさせられたのだけど、多幸感あふれるドラッグストアでの恋愛成就シーンがやけに長いので不安な気持ち(というか確信に近い予感)にさせられる。
ライアン役のボー・バーナムを見てどっかで見た顔だ、と思ったら『ラフ・ナイト』で見たんだった。なんともいえず優しい顔がいい。そして身長が超でかい。

ということでまあ悪い予感は当たるのだが、クライマックスの復讐の、名前にまつわるくだりは本当に良かった。名前入りのペンダントの扱いや、死んだニーナの名前を覚えているのは誰かという話、性被害者に加害者の名前がつきまとうことの苦痛、そしてその逆転を起こすエンディングまで周到。

男は基本敵になってしまう話だけど、女性の同級生を敵とも味方ともつかないところに落とし込んだのも面白かった。さらに仇の一人であった弁護士を赦さざるを得ないという複雑な心情の描写もすごい(それが最後にいきてくることも含め)。

『タクシードライバー』『ジョーカー』などなど病んだ男性主人公の作品は多くあれど、女性の痛みと病みをこういう形で昇華させる犯罪映画は新鮮で社会性もあり、そのうえめちゃくちゃ面白かった。
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