Mayo

プロミシング・ヤング・ウーマンのMayoのレビュー・感想・評価

4.8
めちゃくちゃ面白かった。
面白かったけど、観終わってものすごく苦しくて辛くて心がずしっとしている。

悪い男たちを成敗するスカッと系かのような宣伝ばかりだったけど、違ったなぁ。もっと複雑で身近でリアルな話だった。痛快に、ポップにおしゃれに、男と女(というより男→女か)の悲しい現実をつきつけてきた。

高校生くらいの頃から、よく母から服装には気をつけるようにと言われてきた。胸が開いた服、短いスカート、隙を見せて簡単にモノにできる女だと思わせるな。と。
でも果たして、男が勘違いする服装をしている女が悪いの?好きな服着ていいよね?
「性的同意」という言葉をよく目にするようになったけど、この映画のように、泥酔している女性をそのまま連れ帰った男は世の中にどのくらいいるのだろう。
そして自分のパートナーがそんな最低な男じゃない保証は?
…とか考えがめぐってめぐってしばらく止まらなかった。

そんな男たちを懲らしめて回っているキャシー。
キャシーを演じているキャリー・マリガンの服装や髪型がかわいい!後頭部をアップで見せるカットが印象的。
なんでも90年代後半〜2000年代のキューティ映画の世界観を意識しているとか。監督は同い年ということで、そりゃツボが一緒だわと納得。そんな私たち30代女性の大好物な世界を男たちが壊していく。
冒頭から「the OC」のセスが!えーセスがそんなことしないで〜っていう展開で一気に現実を突きつける。その辺りとても計算されている。

音楽もその計算の一つ。Toxicのストリングスバージョンは最高に効いていた。
パリス・ヒルトンの歌歌うところも最高だったな。でも結末まで見てこのシーンを思い出すと悲しいなぁ、つらいなぁ。

キャリー・マリガンは口元の皺のせいかやや老けて見えたけど、下品さと上品さを兼ね備えている感じが絶妙。
お母さん役のジェニファー・クーリッジ、今回はコメディ要素抑えてしっかりお母さん役としてそこにいて、それもとても良かった。お母さん趣味のシャンデリアやアンティークっぽい部屋も不気味で面白い。ああいう実家感の出し方ってあるんだな。
ライアン役のボー・バーナムもめちゃ良かった。元ユーチューバーで映画監督で俳優でコメディアンでっていうマルチクリエーター。お調子者でキャシーに一筋な小児科医に心くすぐられた。

ライアンとのコーヒーショップでの再会のシーンとか、
ライアンとの食事の後、お父さんがキャシーに声をかけるシーンとか、
ニーナのお母さんとのシーンとか、
名シーンもいっぱい。

計算し尽くされた世界をもう一度観たいけど、2回目は色々知っているだけに覚悟がいるかも。
Mayo

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