きき

パピチャ 未来へのランウェイのききのレビュー・感想・評価

3.4
TSUTAYAでジャケ借りした本作。
ムニア・メドゥール監督の長編デビュー作であり、監督の実体験を元にした作品。

90年代、内戦真っ只中のアルジェリア。
デザイナーになることが夢のネジュマ(リナ・クードリ)は、こっそりとナイトクラブで自作のドレスを販売する日々を送っていた。
女性の服装が制限され、自由を奪われる中で、それでも国外に出ることなく、アルジェリアで自由を勝ち取りたいと奔走する少女たちの物語。

今でも内戦や混乱のある国が沢山ある中、平和な日本で暮らしてる身からすると、とにかく衝撃的な内容だった。

男尊女卑が酷い、とかそれだけじゃなく。
日常的に命の危険と隣合わせで、それが正しいことを発言する、行動する自由を行使するという当たり前なことだけで簡単に脅かされる世界。

実際に実話ベース、といっても、話のパーツ、パーツのことらしいので、実際に彼女たちが存在してたわけではないが、きっとどこかに彼女たちがいたであろうと思わせてくれる内容。

これが90年代、たかだか2〜30年前の話なんて信じられないくらいに時代遅れと思うものの、ざっくりしたテーマだけ考えれば、昨今話題になる女性の権利なので、やはり女性の諸々の権利というのは世界的にとても低く、今頃ようやっと問題になったんだな、と。

同じ女性の身からすると、ただひたすらに憤りしか感じない。
女に生まれる、てのは選べたわけでもない、言ってしまえば好んで女に生まれたわけじゃないんだよって話だし、なんで女に生まれたからあれをしなきゃいけない、これはしちゃいけない、それは女がやるべきで、こっちは女がしていいわけがない、みたいなことが沢山あるんだろう。

体の性別が違う以上、造りが違うわけで、向き不向きというものが必ずある。
男が出来ないことで女が出来ることだって山のようにあるでしょーが。
めちゃくちゃナンセンスよね、男だから偉い、なんて。

そうやって抑圧されてきた奮闘する話、とだけ言うととても聞こえのいい女性を応援する作品のような雰囲気だけれど、これは違う。
もっと藻掻いて、苦しんで、打ち砕かれながらも、わたしはアルジェリアで生きていくと歯を食いしばる子たちの話。

確かに外に出て行けばいい話かもしれないのに、ここで生きていく、というその選択肢が素晴らしい。
正解かどうかは分からないけれど、中から変えないと変わらないのも事実ではあるだろうね。

酷い世界の中で、好きなことに必死に打ち込む彼女たちは輝いてたと思う。
好きなことをする、というのだって命取りな世界なのに。
こんな現実があることを知れる、というのは、やはり映画の良いところだと思う。
知らないよりは絶対いい。

ただ、最後の展開は、どうだろう。
それを変化に繋がる、と取るべきなのか、二の舞いになるのでは、と危惧すべきなのか。

記録 : 2021年87本目。
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