きき

最後の決闘裁判のききのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.2
リドリー・スコットが描く史劇スペクタクル、と思いきや、時代が違うだけで昨今議題に上がる女性の権利、女性とは、という史実を元にした現代に訴えかけるような作品。
主演に、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー。

騎士であるカルージュ(マット・デイモン)の妻であるマルグリット(ジョディ・カマー)は、夫の留守時に訪ねてきた彼の友人、ル・グリ(アダム・ドライバー)に強姦される。
しかし、誰も目撃者はおらず、カルージュはル・グリに決闘を申し込むのだった。

簡単に説明するとこんなお話。
一見、妻の汚名を晴らす為、仇討ちじゃないけど決闘する話かと思いきや、そんな簡単なものではないのよね。

正直この手のコッテコテな歴史劇は苦手なので、ジョディじゃなかったら観てなかったと思う。
なので、基本的には彼女以外期待せず、さらっとしたあらすじ以外知らずに観賞。

今回脚本も担当してる変な髪の仲良しコンビとカイロレンなアダムも出演。
アダムは好きなので良き。

完全にエンタメ、と考えると面白い構成で楽しめた。
内容的に楽しかったという感想があっているわけではないとは思うのだけども、エンタメとして、ね。

人の視点って、同じ物事でもここまで違うのかって話。
それを全く同じ時系列を繰り返すことで見せてくるのは面白いし、それと同時にこれが現実です、と突きつけてくる。
時代背景的にも女は黙ってなんぼ、男を立てて、言いなりになり、政治の駒として使われる。
挙句は世継ぎを生む道具のよう、意思や感情なんてないかのように扱われる。

そんな中で、決して押し黙ることなく立ち向かった女性の話、というと聞こえはいいけれど、結局それすらも利用されただけだったような描き方。
マルグリットの強い姿勢は今の時代に通ずるもので、この時代に映画化するに相応しいとは思う。
だから、自ずと結末は分かってしまうのだけどね( ´ω` )

ジョディファンからすると、三人のジョディが観られる!
マットの視点から見た可愛くて従順な妻。
アダムの視点から見た小悪魔な人妻。
そして本人からの真実。
最後の数分のシーン、彼女の虚ろな表情も素晴らしかった。

それ以外は、本当にいつの時代も女は雑に扱われ、暴行シーンは本当に酷いし、そこも被害者なのに色目を使っただのなんだの言われる。
警戒心が足りない、隙があった、なんで被害者がそんなことを言われないといけないわけ?
確かに警戒するに越したことはないし、隙を作らないに超したことはないのかもしれないけど、そもそも同意のないものはすべて暴力で、完全に加害者が100%悪い。
それを女性が、と言われる男の視点ってこういうことなんだ、となる映画。

はっきり言って、胸糞悪い。

あの尋問シーンも本当に酷いし、何故いつの時代も女性はあんな扱いを受け続けないといけないのか。
そんな中で強くあろうとするマルグリットみたいな女性が増えるといいし、そうありたいと思う。

この映画に同じように憤りを感じられる男性、勿論女性も増えたらいいな。

記録 : 2021年109本目。
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