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ミナリのorangejuiceのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.5
家族の絆というもの。
家族という形は、いつも同じ形じゃなくて。
一緒に長く時を重ねても、すべて理解できるわけでもなく、盤石なわけでもなくて。

夢を追い続ける夫。家族よりも夢を選ぶ夫に幻滅もするし軽蔑もするのは、愛があるからなのだと思う。だからこそ傷つくし、いっそ離れ離れになった方が楽かと思う時すらあるだろう。今にも切れそうな綱渡りみたいな場面に、胸が締め付けられる。

デビッドとおばあちゃんの関係性がよかった。
おばあちゃんがあの夜、どんな気持ちで歩いていたか。デビッドの言葉に涙が止まらなかった。

今はよくても未来が信じられないという言葉は、ひたすら我慢をし疲れ切った妻の心の叫びだった。
いっそ後先考えずに、夫を信じてしまったほうが楽なのかもしれない。
どれだけ考えたところで、未来を100パーセント予測することはできないから。
けれど、長い我慢の中で限界まで育ってしまった不安や恐怖に、眼を曇らせ、それは簡単には消えないのだと感じる。

雑魚寝のシーンに、冒頭の雑魚寝の話題から時を経て、この家族の背景が大きく変わっていたこと、そして希望が見えたこと。

家族という形を保つのには少なからず意思の力が必要だと感じる。
けれど、同じ場所で同じ時を過ごして同じ困難を乗り越えることで、目には見えなくても、愛情の積み重ねというものが確実にあることに気付かせてくれる。
たくましく生きる術を教えてくれる。
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