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愛にイナズマのorangejuiceのネタバレレビュー・内容・結末

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

夢も熱意もある若き映画監督が、どんなふうに潰されて行くのかっていう前半部分がしんどいし、ショックだった。
こういう人間関係自体については、特殊だとは思わないけれど、こんなふうにまったく悪びれることなくそれが当然のやり方、みたいな世界もあるのだとしたら。

映画の企画自体を取り上げられ、実家に行って急に口が悪くなるところがなんかリアルで笑ってしまうし、親への甘えとか心を許してる感じが見えて可愛くすら感じる。

1500万というお金の価値が、環境によって人によって、大きく意味が変わることが興味深かった。
そして、あのマスクがどこまでも登場し続けることの変態さ。
喋りながら血がじわーっと広がるところとか、マスク変えました100枚あるんで、とか細かすぎて思い出しても笑ってしまう。

子供たちの誰も知らなかった、父が捕まった本当の理由にも泣けてしまう。男の人はほんとに偉いなって思う。ダークヒーローみたいなカッコいいことしてるのに、家ではしっかり虐げられて。

10年間も会ってなかった兄弟のバラバラだった心が、ギクシャクと刺々しく暴れながらも、少しずつ近づいて行く様子がドキュメンタリーみたいで。のめり込んで観てしまう。

後半は泣きたいような笑いたいような気持ちがずーっと続いていた。不思議な感覚だった。

家族の形とか、絆ってなんだろう。不器用で痛くて滑稽だし、そしてやっぱり優しい。
携帯電話ショップで、家族という形の認識が強まる様子とか。法的にはもう他人だとしても、家族は一生家族なんだなとか。
停電で真っ暗になった家での様子とか。
妹が侮辱されて、社長にたてつくところとか。
みんなでマスクして乗り込もうとするところとか。

家族に会いたい、と思った。
近いゆえにいろいろあるし、喧嘩もする。傷つけあったとしても、一緒にいられること、それ自体が幸せなんだなと素直に思えた。

そして、夢は。どんな逆境でも、可能性がゼロ中のゼロだとしても、こんなふうに泥くさく追い続けていくことできっとこの先道は開けていくとその熱意に信じる気持ちがたかまるし、ほんとにカッコよかった。

ハグは存在確認、でした。
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