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ナイトメア・アリーのYACCOのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.5
最後まで見終えた時、「Nightmare Alley」という題名がずしんときた。
ひとりの男が、なるべくして(というふうに私には思えた)ある「宿命」にたどり着くまでの小路を描く今作。
正直、救いのない話で見終えたあと、心に残るのは消化しにくい感情だけなのだが、150分という長尺をかけて描かれる「Nightmare(悪夢)Alley(小路)」は、見ている側もその小路に迷いこませてしまうものだった。

主人公の男スタンを演じる、ブラッドリー・クーパー。(何かで、この役をディカプリオにもオファーしたと読んだけれど、確かに彼にも合いそうな役だ)
スタンのなかにある隠しきれない強欲、上昇志向、そして弱さを感じさせるものがあった。
スタンと関わっていく、ケイト・ブランシェット演じるリリス博士、ルーニー・マーラー演じるメアリー等、キャストは誰もが実力派揃いだし、いくつかの映画賞で視覚効果賞にノミネートされていると記憶しているが、その映像からもダークノワールな世界を色濃くみせてくれた。
見る前はもう少し見る側に解釈を委ねるものが多いかなと思っていたが、見ている側を置いていくようなこともない。
しかしながら、この小路はなんとも悲しく辛い迷い路で、かつ救いようがなく。

ノワール映画とは、アメリカ社会の殺伐とした都市風景やシニカルな男性の主人公、その周囲に現れる謎めいた女性の登場人物などを主な物語上の特徴とするとのことだが、まさに本作こそがノワール映画というべき一作なのだろう。
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