ロミオ

ナイトメア・アリーのロミオのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
4.0
クリーチャーの出てこないデル・トロ映画は、夏休みのない8月のようなんて思っていたけど、どこからどう見てもデル・トロ映画でびっくりした。思うにデル・トロ映画の本質は、その神秘性や輪廻的・運命論的なアプローチによる寓話・御伽噺にあるのだと思わされた。

今回のお話は特に輪廻的な側面が非常に強いと思う。かなり丁寧に前半伏線を忍ばせているし、円環的モチーフなどを散りばめている。印象的なのはホルマリン漬け赤ちゃんエノクだろう。赤ん坊という生の誕生、第3の目の悪魔的モチーフ、ホルマリン漬けの永遠感などシンボリックだ。

その輪廻的イメージ、ある種先の読めてしまうストーリーは、最終的にラストにて補完される。まさにそこに集約すべく決められたルートの上を歩いていたのだと気づく、皮肉に満ちた顛末がなんとも独特な読後感を残させると思う。予定調和だからこそ面白いという不思議な感覚だ。

デル・トロ映画らしく美術や衣装、ルックなどもバキバキでめちゃくちゃカッコいい。クリーチャーがいなくてもやれるんだぞというデル・トロの凄みをひしひしと感じた。難点があるとしたら、ちょっと長いぐらいだろう。先が読めてしまう分ノレないと退屈に感じる人もいるかもと思った。

移動式サーカスとか憧れる、そんな映画。
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