こうん

無頼のこうんのレビュー・感想・評価

無頼(2020年製作の映画)
3.7
8年ぶりの井筒和幸監督作品。井筒監督と同じように僕もドン・シーゲルやらペキンパーやら東映やくざ映画を私淑する者ですから、井筒監督の昭和史をトレースする任侠クロニクルを楽しみにしていました…しかし…アレ?忖度パワーで褒めるつもりだったのに、ちょっとこれはあんまり褒めるところが…ナッシング。
目の前で繰り広げられる任侠ドラマの断片をひたすらに眺めるだけの2時間半。
さすがに退屈だった、ということもないんだけど、ドラマが全くぶつ切りで、感情的な引っ掛かりがどこにも見出せませんでした…なんだろう、本当は3時間とか3時間半とかあったんじゃないのか。
どうみても完成尺(もしくは完成稿)からだいぶ切り落とされている感じで、「え?いつの間にそうなったの?」「さっきのあれはどこ行った?」というような展開が目白押し。
1950年代から平成までのクロニクルだからある程度のダイジェスト感は仕方ないとは思うけど、あまりにも感情的な流れがぶつ切り過ぎて。
途中、一瞬だけ筧美和子が出てきてそれなりのキャラクターになりそうに見えたけど、それっきり全然出てこない…む?出しっぱなし切りっぱなしにも程があるんでないですか?
本作のモデルというか大まかなモチーフにしているのが後藤忠政氏だと思うけど、まだご存命のはずの氏の半生をマジで描こうとすればけっこう今もってアンタッチャブルな部分があるんで、そういうことでこうなったんだろうか…とまで邪推したくなるようなドラマの虫食い穴だらけぶりでした。
…ということでそれなりに好演している松本利夫(まつぼっち見てたよ!)も柳ゆり菜(競輪のCMが好きでした)も、キャラクターとして全然活きていないし、まぁぶっちゃけ興味がそんなに持てない。もうちょっとなんとかならんかったのかね?
ただ展開を追うばかりの2時間半で井筒映画の危うさをはらんだ空気感とか冷たいバイオレンスとか、あまり感じられませんでしたね。
「ヒーローショー」とか「黄金を抱いて翔べ」とか、現実と地続きであることを感じさせる迫力があったのに…なんだか残念。
見どころと言えば、気合入れて揃えたであろう味のある貌のオンパレード。昭和顔展覧会。久しぶりに隆大介(台湾で暴れて捕まってスコセッシ映画降板したひと)を観た気がするけど、味があってよかったよ。
そのスコセッシの「アイリッシュマン」とか「ゴッドファーザー」とか「仁義なき戦い」4部作とか、そういう高みを目指したのはわかりますけどね。
でもなぁ…最後にドヤ顔で「無頼」とタイトル出されても、だれが?となってしまいましたですよ。予告編のちょっと牧歌的な雰囲気は良かったんだけど…
「北陸代理戦争」の再現(パロディ?)は笑いました。
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