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ファーザーのkuuのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.5
『ファーザー』
原題The Father.
映倫区分G.
製作年2020年。上映時間97分。
製作国イギリス・フランス合作

名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父ちゃんを演じ(同名の役柄のアンソニーの生年月日1937年12月31日はアンソニーホプキンスの実際の生年月日やし等身大)、『羊たちの沈黙』以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。
ヤリよるなぁ~。
彼は、今作品での受賞により、自閉症スペクトラムであることを公表。
この障害を持つ俳優さんでオスカーを受賞した最初の人物となったそうな。
『羊たちの沈黙』のときはアスペルガー症候群と診断されておらず、ましてや診断結果を公にしてなかったそうっす。
アン役にオリビア・コールマン。

原作者フロリアン・ゼレールが自らメガホンをとり、脚本家クリストファー・ハンプトンとゼレール監督が共同脚本を手がけた。

日本を含め世界30カ国以上で上演された舞台『Le Pere 父』(ゼレールが2012年に発表した戯曲、原題: Le Père)を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。

ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。
そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。
しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。
そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。
現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。。。

老年期の孤独の問題を、古典的に現代風にアレンジされてる本作品。
『ペルソナ』、 
『ファイト・クラブ』、
『シャッター・アイランド』とかの妄想系映画のリアルな父ちゃん。
タイトルやジャンルから想像されるような感動的な体験じゃなく、序盤はひどく混乱し、
Memory Loss(記憶喪失)や
Old-age Solitude Issue(老年期孤独問題)、
なんて呼ばれる現実的な用語に基づいて、非常に妄想的な内容になっています。
普通の問題を探るために複雑な理論が用いられているし、難しいなぁって感じましたし、理解を深めるためにはもう一度見なければならないとは思ってます。
でも、アンソニー・ホプキンスは忘れられない演技をしてたなぁ。 
嗚呼、って切ない息が漏れた。
アンソニー・ホプキンスの素晴らしい演技、ラストは個人的には泪がとまらなかったっす。
今作品はアンソニー・ホプキンスの表現力に支えられて、温かみのある語り口で描かれた今作品は、認知症の悲痛な姿を描き、この精神疾患が悪化するにつれて人生を支配する混乱と挫折を観てる側に訴える、ホンマ胸を打つ。
頑固ジジイって憎らしかったり、とても可愛く見えたり(失礼ながら)。
本作品は、2012年に発表した同名の戯曲を、今回が初監督となるフロリアン・ツェラーが共同で脚本・監督したもので、丁寧かつ誠実に作られてた。小生の回りには、認知症の方居ないし誤りがあるかも知れませんが、認知症の人は、
心が少しずつ衰え、
時間、
現実、
思考、
記憶がわからなくなると聞く。
それでも合理的に理解しようとするんでしょうが、本作品のプロットの構成とナレーションは、それをさらに明確にしてます。
家庭的な設定、無音のカメラワーク、乱れのないペース、優れた編集、前提条件に合っていますが、真のハイライトは演技これに尽きる。
アンソニー・ホプキンスは、この作品で絶対的な力を発揮してると思います。
彼のキャラへの
誇り、
恐れ、
苦悩、
困惑
これらを正確に表現し、彼のキャリアん中でも最高の作品やと思うなぁ。
また、オリビア・コールマンは、父ちゃん(あくまでも親父としときますが)が衰えていくのを辛そうに見守る娘役として登場してて、感情を込めた演技を披露してた。
全体として、今作品は、ストーリーテリングにニュアンスがあって、表現に共感が持て、ホプキンスとコルマンが見事に演じてます。
今作品から来る困惑は、観てる側が主人公のように、答えや合理的な説明を求めて奔走するように意図的に作られており、彼に共感すればするほど、すべてが壊滅的になる。
それ故に、そこに嵌まる、嵌まらないで作品の評価はかわるのかなぁ。
諄くなるかも知れへんけど、今作品は、悲劇的で、悲惨で、強烈な感動を与えてくれる作品です。
また、先にも書いたように『ファイト・クラブ』などを思い出されましたが、今作品はそれらのフィクション・スリラーよりもはるかに現実的でした。
また、97分という短い上映時間にもかかわらず、退屈することなく、むしろ短く感じられました。
個人的には、オイオイ、もっと見せてくれよ、チョッとぉ短すぎるやん、なんて思ってしまった。
兎にも角にも、スクリーンに映し出されるものはどれも素晴らしかったです。
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