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キネマの神様のYACCOのレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.5
小説「キネマの神様」を山田洋次監督がどう映画化するのだろうと思っていたが、原作の設定を活かしつつ、良い具合に山田洋次監督風に改編をしてくれたと思う。結果、全くの別物になっているようにも思うが、個人的にはこちらの方が好きだ。
今作は、山田洋次監督からのメッセージなのかもしれないなと思い、少しでも何かを受け取ることが出来たらと思い心してみた。
原作を読んだ時、確かにギャンブル狂いで映画好きのお父さんのゴウは志村けんさんのほうがイメージかなとは思ったけれど、なかなかどうして沢田研二がハマっていた。現代には消えつつある夫婦を演じた宮本信子も、原作ではバリキャリ設定だった娘役の寺島しのぶと役者さんはどの方もつわものぞろい。
そして、原作からの改編で大きく時間が割かれた、若かりし頃のゴウと淑子、テラシン、そして人気女優桂園子たちが描く、昔の古き良き時代の映画業界の描写が、いささかノスタルジーが過ぎるようなしたものの味わい深いものがあった。
この時代を演じた、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子と、皆現代の顔なのだけれど、衣装や持ち物、言葉使いや仕草等、当時を再現するための苦労が垣間見えたけれど、モノクロの時代を生きる若者だったと思う。同じ日本人でも時代が変われば、人も物もあらゆるものが変わるのだと、今私が生きているこの時代もいつの日か時代考証なんてことをしないと再現できなくなるのだろうな、等と思ってしまった。
しかし、時代が変わっても、しゃべり言葉や仕草が変わっても、流行りの服や、夫婦の在り方が変わっても、何か変わらないものがあるはずで、そのひとつに映画を作る人たちの映画への愛みたいなものもあって、それが今作を通して伝えたかったことなのかしらなどと、見終わった時、センチメンタルな気分になってしまった。そんな切なくも温かい映画だった。
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