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宇宙でいちばんあかるい屋根のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

中学生のヒロインは書道教室の屋上にこっそり忍び込んで過ごすひとりの時間を好んでいた。ある日、いつも通り屋上に行くと派手な格好をした見知らぬ老婆・星ばあが話しかけてきた。明け透けな物言いをする奇怪な星ばあに最初は圧倒されるヒロインだったが、過ごす時間が増えるにつれ次第に家族にも言えない悩みを星ばあに打ち明けるようになって......という話。

昨年の日本アカデミー作品賞を獲得した「新聞記者」の藤井道人監督の最新作。主演は同監督の「デイアンドナイト」でもヒロインをつとめた清原果耶。共演の老婆役は桃井かおり。公開初日に鑑賞。

藤井監督のここ数年の作品は社会の暗部をえぐる刺激的な作風で登場人物みんな不幸!みたいな印象があったが、本作はファンタジー小説が原作ということもあり年頃の少女が直面する悩みを通じ成長していくひと夏の日常のをゆったりと描いた穏やか作品となっている。予備知識無しで行ったので、いつ不幸話が出てくるのだろうと身構えて観てしまった(^^)

短篇集のような構成となっているが、正直各話のエピソードは弱く、中盤まではやや退屈に感じていた。しかし、その弱めの逸話を積み重ねることでヒロインと星ばあの絆がどんどん深まっていき、終盤で一気に盛り上げて泣かせにかかるというペース配分は絶妙だった。また、ヒロインが優しい両親に囲まれつつも、血の繋がらない母が懐妊したことで漠然と不安を抱くところや、水墨画家である実母に惹かれるくだりは共感させられた。微妙な演出だなあと感じる部分はいくつかあったが、最後の糸電話と水墨画展と主題歌で細かい欠点を全部ひっくり返せるくらいの勢いがあった。

今が旬の清原果耶の魅力を存分に活かした作品で、クールで大人っぽい見た目だが子どもらしい可愛らしさを備えたヒロインを好演していた。泣く演技が本当に上手い。桃井かおりは何を演じても桃井かおりに見えてしまうが、さすがの存在感だった。伊藤健太郎の姉役出ていた清水くるみはすごい久々に見た気がする。ヒロイン元彼役の人は「天気の子」の主役だったのね。

クラゲで空飛ぶシーンだけはちょっと...と思った(^^)
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