平野レミゼラブル

東京リベンジャーズの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

東京リベンジャーズ(2021年製作の映画)
3.2
【チートに頼らず根性で乗り切れ!!史上最も泥臭いタイムリープ】
週間少年マガジン連載の原作未読、アニメ未視聴ながら、『クローズ』のようなヤンキー同士の抗争に、『バタフライ・エフェクト』のように未来でそのヤンキー達の抗争に巻き込まれて死んでしまう恋人を助ける物語を付与したような作品ということで気になっておりました。そして今回、男子限定試写会が当たりましたので一足先に観賞。
男子限定試写、それこそ『HiGH & LOW』で経験済みだったんですが、東リベは割とハイローと客層が異なりますね。それこそパツキンでヤンチャそうな高校生率が高く、若干肩身が狭いというか……なんか半端モンのアラサーが混じってごめんねって感じの気持ちになったというか……それはともかく、試写会自体は楽しかったです。

最近観たタイムリープ系の作品が、主人公が何度も死にながら鍛え上げて強くなってリベンジしていく『コンティニュー』だったんで、東リベもまた弱小ヤンキーが何度もやり直しながら強くなっていく泥臭い物語なのかなァって思ってたんですが、そこは大きく異なりましたね。
まず、本作のタイムリープのルールというのが10年前の同日にしか戻れず、そして過去で過ごしている間は未来の自分の意識はないまま時は進む……という不可逆性のもの。そのため、未来で死んでいた人物を過去で救えば未来で復活しますが、過去で救えなかったままだと救えなかった状態のまま未来で固定されてしまう。そのため、何回もやり直せばクリアできるわけではないのです。

そもそもタイムリープの起点が「東京卍會」という最強の暴走族に所属するキヨマサという不良にタケミチ一行が敗北し、奴隷となってしまうところなんですから最初から詰んでしまっている。タケミチが何をやってもダメダメな底辺生活を送っているきっかけに定めているのがキヨマサに敗北した日であり、そこを乗り越えられなかった以上、未来は完全に閉ざされたように感じてしまいます。
しかし、本作は安易に「何度もやり直す」や「事前に知っている危機を回避する」といった解決手段を選ばなかったことに意義があります。タケミチがどん詰まりに直面してどんな手段を取ったのかと言うと、「詰んでしまった状態であっても諦めずに立ち向かう」というこれ以上なくシンプルなもの。チートを使わず根性で乗り切ろうとする泥臭さが眩く映ります。

そのため、タイムリープや未来改変といった凝ったギミックを持ち出した割に話はこぢんまりとしているし、最終決戦も精神的には成長したけど肉体的には元のままなタケミチの為に用意された中ボスクラスのもので、スケール的には小ささを感じてしまいます。
しかし、「タケミチにとって本当に決着をつけるべき相手は誰か?」と「タケミチに一番必要になる成長は何か?」という部分を見誤らず、物語を最後まで突き進めていたので「これでいい」と納得することが出来ます。
スケールの大きさや喧嘩の強さは強者代表であるマイキーやドラケンに完全に任せて、タケミチ自身の物語はちょっとした成長を描写し、それでも彼にとっては大きなリベンジを果たすことでカタルシスとする辺りに魅力を感じました。
無論、原作はまだ続いているようなので、このあと何回も波乱があるんでしょうけど(そもそも映画で意味深に登場した稀咲や半間がまだ暗躍を続けているため、その点では映画は消化不良)変にクリフハンガーも用意せず、綺麗に1作できっちり筋を通してまとめたところが良かったです。

ただ、原作未読でも1本の映画としてしっかりしていると感じられたものの、多分間をスッ飛ばしたんだろうなって部分もそれなりに感じられはしました。タイムリープの協力者である直人が突然タケミチに殺害を依頼したりとか、未来あっくんのリープに気が付いた末の顛末とか。
あと、突然学校押し掛けてきて絡んできたヤンキーを全員叩きのめしたり窓から突き落としたり、挙句の果てにカーペットにする横暴を働いといて実はイイヤツってのは相当に無理があるよ!!

そんな喧嘩描写に関しては悪くないんだけど、山田裕貴や鈴木伸之といったハイローメンバーがいる割には拍子抜けって感じかなァ……最後までそこまで強くないタケミチレベルであれば、まあ納得の喧嘩描写なんだけど、設定上でも超強いハズのドラケンですら思いのほか大人しい動きだったし。ハイローで凄まじい動きを魅せていた山田裕貴くんのポテンシャル考えると、なんか全体的にセーブしていた感じがして勿体なかったです。
でも、ドラケンの耐久性は鉄パイプでガンガン殴られても弾き返すハイロー準拠の硬さで笑った。コイツを殺すってことにまず無理があるだろ!ナイフで刺されても全然致命傷に思えないんだよ!!

あと吉沢亮は演技力でカバーしているにしても、あまりにツラが良すぎて流石に不良が似合わん!!あとで原作のビジュアル確認したら、かなりイケメン優男で普通に原作準拠ではあったんだけど、それであってもツラが良すぎて最強の不良って説得力がねェ!!
陰キャや渋沢栄一まで演じ切れる割と広い演技幅持っているんですけどね、吉沢亮。流石に暴走族のカシラとしては圧を感じられないレベルにツラが良すぎるのがこの場合は難点でした。