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最後にして最初の人類のbackpackerのレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
3.0
ヨハン・ヨハンソン。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『ボーダーライン』や『メッセージ』等で音楽を担当した、映画音楽界でも大変有名な音楽家。2018年、48歳の若さで、亡くなられました。(パノス・コスマトス監督の『マンディ地獄のロードウォリアー』がラストスコア。)
そんなヨハンソンが自ら監督し、未完となっていた作品が、彼の遺志を継いだ仲間たちの手により完成。2021年7月、日本でも晴れて公開となりました。
それが本作、『最後にして最初の人類』です。


なんと言いますか、私程度では、評価をつけるのは極めて困難な作品でした。
そもそも本作は、イギリス人哲学者・小説家のオラフ・ステープルドン氏が、1930年に発表した同名のSF小説が原作です。
内容は「世界終末戦争、火星人との闘争を経て、進化の階梯を登り始めた人類は地球を脱出。金星や海王星に移住するが、ついに太陽系最後の日が……20億年に及ぶ人類の未来史を神話的な想像力で描いた伝説的作品(書籍販売Webサイトより抜粋)」というもので、映像化にあたっては、壮大なスケールの叙事詩のほんの一幕を切り出したに過ぎないとのことなのです。

そもそも、本作を見た理由も、個人的に興味があり書籍をいくつか所持していた、旧ユーゴスラビアの戦争記念碑"スポメニック"が映される映画だったため、という理由であり、極めて淡々としたティルダ・スウィントンの語りと、重厚な唸り声の如きヨハンソン・サウンドを味方につけたスポメニック映像の破壊力は強烈で、途中からは睡魔との戦いに突入するハメに……笑
要するに、本作を見るための"覚悟完了"ができていなかったということに他なりません。


とはいえ、この映画の最大の売りは間違いなくヨハンソンの生み出した音楽。このヨハンソン・サウンドを鑑賞に最適化させたうえで全身に浴びることができるのは、映画館の特権です。
映像芸術という言葉があまりにも似合う作品には、低俗な映画ばかり好んでみる自分にはまだ敷居が高すぎたようにも思えますが、本作を映画館で観たこと自体が、とても良い思い出となりました。
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