horahuki

ブラッド・ブレイドのhorahukiのレビュー・感想・評価

ブラッド・ブレイド(2019年製作の映画)
3.7
植民地主義としてのゾンビ

11月はゾンビ㉑

ゾンビパンデミックで滅亡の危機に瀕した世界。カナダの保護区レッドクローでバリケードを築き生活する人々。安全だと思われていたバリケード内での対立から大惨事へと発展していく反植民地主義なゾンビ映画。

ジャケ画像からもっとテンション高めなゾンビコメディなのかと思っていたら、コメディ要素はありつつもすんごい真面目な社会派ゾンビ映画で驚いた。本作の主人公サイドはカナダの先住民なのだけど、先住民は免疫があり感染せず、その一方でウイルスに感染して襲ってくるのは白人たちというのが新鮮。その設定のもと、バリケードで守られている集落へのゾンビたちの襲撃を先住民に対する植民地主義的な侵略行為と見たてている。

釣りたての魚をさばいてる最中に、内臓を取り出したはずの魚が動き出すというパンデミックのスタート地点から既に異様さが途轍もなく、尾びれが動き出しとともにカットが切り替わり、異常が4倍に急激に膨れ上がる、次第に犬、そして人間に…と拡大していく。そこからは一気に6ヶ月後に飛び、バリケードの中での籠城生活の本編が始まる。

コメディ要素はそこまで多くはないけれど、橋からゾンビが接近してくるのに対して、粉砕機を設置しておくことで半自動でゾンビが次々に勝手に粉砕していくのが笑えるし、お化け屋敷みたいに腸でぶら下がったゾンビが急に出てくるところとか楽しいアイデアが沢山あった。

本作はレスティゴーシュ保護区で撮影されており、その場所はかつて警察が漁業権を制限するために保護区に侵入した事件があった場所のようで、魚からのパンデミックのスタートはそういった意図を含ませたものらしい。そして助けを求めてやって来る白人に対して共存(受け入れ)と排除で内部の意見が対立する様は、先住民の入植者に対する反応の対立そのもので、その白人が持ち込んだ感染者を包んでた布をすぐに焼かせる行為も、天然痘が持ち込まれた毛布を介して広まった歴史を反映させたものらしい。

マイノリティの現状への対応における価値観の対立を兄弟に重ねた『ブラックパンサー』感も面白く、また先住民の子を宿した白人女性が物語の重要ポイントとして登場する希望の演出はどこか『ゾンビ』や『ドーンオブザデッド』のようでもある。ジャケに書かれた最強の戦士たちのバトルというところはそれほど感じなかったけど、日本刀を持ったジジイの奮闘っぷりは達人感が凄くて良かった。刀についた血を拭う姿がたまんなかった!
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