ゴトウ

ドラゴンボール超 スーパーヒーローのゴトウのレビュー・感想・評価

2.7
鳥山明先生のご冥福をお祈りいたします。漫画は何度も読み返してきた作品であり、ドラゴンボールのアニメ、ゲーム等にも触れてきたので、訃報には落ち込んだ。が、それとこれとは別でこの映画はあんまり面白くない!変なオリキャラとかが出てくる過去の劇場版とかも、今になって観たらこんな感じに見えるのだろうか。「最後には悟空が勝つだろうな〜」と思っていても、旧ブロリーやクウラには怖さがあった。思い出補正と言われればそれまでだけれど…。神様の上の神様の上の神様の……みたいな人たちと友達みたいになってしまったがゆえ、とにかく緊張感がないので、自然こちらとしても敵の策略や強さに関心が向かない。作り手もその辺は織り込み済みで、最大戦力の悟空とベジータを隔離してみたり、ブウや天津飯などなどのメインキャラクターを潔く出さなかったりして、ちょっと違う見せ方をしようとしているのでしょう。ただ、初期ドラゴンボールやグレートサイヤマンくらいの(もしくはドラゴンボール以外の鳥山ワークスの)コミカルな時のテイストを持ち込むのは、緊張感のなさを加速させるだけのような気がした。

ただ「史上最大の敵」みたいな触れ込みがミスマッチなだけで、ゆるい雰囲気自体はむしろ楽しい。やっと訪れた平和な世界(を、新たな脅威の登場を通してしか描けないのは皮肉なのだが)で生きるキャラクターたちのありようは見ていて面白いし、テレパシーみたいな力を使いようがないブルマやビーデルと連絡を取るために、なんとスマホを持っているピッコロ、みたいなかわいいシーンもある。ブルマがしょうもない願いを定期的に叶えてドラゴンボールを悪党から守っているみたいなのは後日談として超面白い。し、無駄な殺生を避けるためか、ピッコロが変装して敵の本拠地に潜入するみたいな見せ方もしてくるのが良い。殺して止めないといけないような敵との戦いはもうたくさん見てきたもんね。

アクションについては3D化が賛否両論だったように思うけれど、ドラゴンボールだな〜とは思った。過去の名バトルをセルフオマージュしているのも、作り手側の情熱を感じる。ドラゴンボールを見て育った世代もスタッフにいるだろうしなぁ。ベジータの寝転がって両足キック、見取り図の漫才でもお馴染みの両手を組んで振り下ろすアクションとか、ついついぶち上がってしまう。

が、悲しいかな新形態を足すみたいなことがどうしても必要になってしまうのでしょうか、ピッコロの巨大化が再び見られるだけでも嬉しいのに、妙なパワーアップは喜びきれない。一応、最長老の能力とか、原典の文脈に沿ったパワーアップの理由づけはされているのだが、いくらなんでも悟飯は怒らされてばっかりじゃないですか?キレキャラみたいでかわいそうだし、悟飯が怒らなくても良い世界はいつ訪れるのかしらと思わされてしまった。そんなわけで新形態は結構どうでも良い。原作の文脈に乗せようとする意向が強いのも、半分はそうしないとうるさい人がいる、もう半分はドラゴンボール見て育った人らが作り手側にいるからだろうけれど、魔貫光殺砲なんて原作で一回しか出てきてないからね。「悟飯が魔貫光殺砲撃った!」というのをアツい場面として据えているのも、ドラゴンボールの自家中毒というか、視野狭窄にも思える。

そんなわけで、鳥山明が監修についていようがいまいがやっぱり続編は蛇足のように思える。本人もいろいろ覚えていなかったし。新作映画がもしあるなら、天下一武道会とその前後の日常パートとかでなんとかなりませんかしら…。
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