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護られなかった者たちへのYACCOのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
4.0
この映画の原作は未読だったのだが、東日本大震災後の復興が進む仙台で発生した連続殺人事件を巡り、日本の生活保護制度の欠陥に迫る社会派ミステリーを映画化したとのこと。
登場人物が皆、東日本大震災で大切な人を失い、そして心に癒えない傷を抱いている。
本作で悪役とみなされる人物でさえ、東日本大震災に影響を受けている。原作の作者が「事件の犯人はわかっても、物語の犯人は読み終えた後も誰にもわからない」と仰っていたらしいが、最後まで見てその言葉の意味を理解した。
事件の結末は見ている側も恐らく途中で気が付くと思う。しかしながら、この物語の悪は誰なのか、何なのか。この映画を見終わっても、私は答えを出せなかった。

ここ数年見ている瀬々監督映画はどれもこういったメッセージ性が強いものを何故か見ているようで、また、過去作に出演していた役者さんたちが出ているのも瀬々監督映画だからなのかもしれない。この監督の映画を見ているとどこか息苦しさを感じてしまうのだけれど、そういった題材のものを使っているからなのか、この監督が作る映画だからなのか。

背中で語る阿部寛、むき出しの怒りを隠そうとしない佐藤健、対照的にどす黒い怒りをうちに秘めた清原果耶。あの日、同じ場所にいた3人が交錯していく。
佐藤健演じる利根と清原果耶演じる円山幹子を救う、けいさんに賠償美津子。演技も勿論だが、避難民の高齢女性をありのままで演じていた。
自分たちの家族や同僚からは人格者と呼ばれる人間が抱える闇。そんな闇を抱えた人物を、永山瑛太、緒方直人、吉岡秀隆が演じる。
誰もが、震災後の日本を心になんらかの傷を抱えながらも生きる様を見せてくれたように思う。

息苦しさすら感じるこの映画のなか生きる護られなかった者たちの姿に、私たちは何を思うべきなのだろうか。
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