たにたに

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのたにたにのレビュー・感想・評価

4.1
【愛の哲学】2022年101本目

主人公の中国系の女の子エリー。
同級生の男子ダニエルに、想いを寄せる女の子アスターへの手紙の代筆を頼まれる。
しかし、その美人な女の子に彼女自身も想いを寄せていた。
不思議な三角関係の中で、"愛"というものを知る3人の青春ラブストーリー。


いやー、これはやられました。
哲学的でもあり、宗教的でもある。
タイトル通り"面白いのはここから"と、なんとなく空気感が変わる場面が訪れて、そこからラストスパートにかける内なる感情の解放が、愛の切なさと素晴らしさを同時に表現する。

手紙の代筆ということで、現代版シラノというには少し安すぎる表現かもしれない。
中盤、手紙からメッセージのやり取りにシフトをし、若者らしからぬ哲学的な、そしてとりとめのない話が繰り広げられる。

ダニエルは口下手で、感情を伝えることが苦手であるが、その行動力と努力家な面にエリーは心動かされている。
彼の真っ直ぐな感情というのが、映画で見た知識を間に受けた未成熟な発想で、子供っぽくベタなのであるが、
そのストレートな表現というフリがあったが故にラストの列車を追いかけるザ・青春ムービーの王道パターンにさえ感動を覚えてしまうという、結局自分もベタ展開好きなんだなと気付かされる悔しさも混じる快感を覚えた。


●重力は孤独への物質的な反応
アスターの秘密の場所でエリーが発する言葉。ここのシーンは、アスターがメールの相手がなんとなくエリーであると気づいた気がした場面でもあると思います。

重力が物質的に反応しているのは言わずもがなですが、精神的な心情となる孤独にこそ反応しているのだというエリーらしい言葉です。

我々が生きている中で重力は当然の自然法則です。だから、日々重力を意識的に感じながら生きてはいません。
彼女が孤独を感じているのは、人種や、学校での自身の役割みたいなところ、そして大きくは人とは違う"愛"の行き先への迷いから来ている。つまり彼女は、重力というのはこの地球に1人である"孤独な"自分自身を引っ張る概念として捉えているのではないか。
身体的にかかるものではなく、孤独だからこそかかるものだと述べているのではと思う。


●愛は厄介でおぞましくて利己的、そして大胆

愛というのは、なんとも響きの良い素敵な言葉だ。しかし、実際はそんなもんじゃない。愛することは、自分の幸せを掴み取りたい願望とも捉えられる。
その時点で、愛は人を変えてしまうかもしれない。

この言葉を発したエリーが、ラスト大胆に行動する場面が特徴的である。

相手の愛を受け取る寛容さと、
自分の愛を捧げる不寛容さ。

愛というのはこの二面性が共存して成立するのだ。
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