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TITANE/チタンのYYamadaのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.6
【#戴冠!カンヌ映画祭パルムドール】
【ホラー映画のススメ】
◆作品名:
TITANE/チタン (2021)
◆映倫区分 / 日本 : R15+
◆ホラーの要素
 自らの身体変化に及ぼす恐怖
◆恐怖の種類とレベル
 精神的恐怖 ★★★☆☆
 肉体的恐怖 ★★★★★
 知識的恐怖 ★★★☆☆

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。
・自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセントと出会う。ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていた。2人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があった…。

〈見処〉
①壊して、生まれる——
常識を逸脱した映画、カンヌに輝く。
・『TITANE/チタン』は、2021年にフランス・ベルギー合作にて製作されたホラー・スリラー。
・監督・脚本は、カニバリズムを含む青春ホラー『RAW 少女のめざめ』(2016)で鮮烈なデビューを飾ったフランスの女流監督ジュリア・デュクルノーの長編第2作。
・子供の頃に交通事故で傷を負い、頭にチタン製のプレートを埋め込まれ、数奇な運命を辿る女性アレクシアを、これが長編デビュー作となるアガト・ルセルが主演。共演者はヴァンサン・ランドン、ギャランス・マリリエ、ライ・サラメなど。
・本作は2021年7月に開催された、第74回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを獲得。ジュリア・デュクルノーは、『ピアノ・レッスン』(1993)のジェーン・カンピオン以来、パルムドールを受賞した史上2人目の女性監督となった。

②ボディー・ホラー
・暴力、肉体の切断、病気感染など人体の破壊や変質を、視覚的に残酷でグロテスクに描写するホラー映画のサブジャンル、「ボディ・ホラー/Body horror」。
・過去の代表作は『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)、『エイリアン』(1979)、『遊星からの物体X』 (1982)、『ザ・フライ』(1986)、『マーターズ』(2008)など。
・本作においても、冒頭のアレクシアの頭部を金属機器で固定し手術するシーンを皮切りに、捜査から逃れるために自らの顔面を殴打したり、自ら中絶を試みる場面など、身体破壊する行動がセンセーショナルに描かれている。

③結び…本作の見処は?
あまりにも破壊的…良く獲れたな、
カンヌ映画祭 最高賞。
◎: 美貌を誇るダンサーの身体が、妊娠に伴い、尋常とはいえないような妊婦の姿に変容していく様がとにかくおぞましく、肉体を痛め付けるシーンは、直視出来ないほど。エロスとバイオレンスに対して、スタイリッシュな映像と音楽でつなぐ、破壊的創造映画。
◎: 序盤から見られる「車」を対物性愛の対象とする狂った性描写を、エンディングの最重要シーンに結びつけ、キリスト教の処女懐胎を彷彿とさせるような宗教的見解を得られるストーリーとなっている。
▲: チタンプレートの影響であるからだろうが、アレクシアが猟奇的殺害を繰り返す動機つけや、ヴィンセントに出会ってから攻撃性が消失した理由が描かれておらず、パルムドール受賞作品としての「芸術性」に目を向けなければ、ただの人体破壊ホラーとして、スルーされそうな作品でもある。
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