むぅ

舞台よりすてきな生活のむぅのレビュー・感想・評価

舞台よりすてきな生活(2000年製作の映画)
3.5
「僕は評価されるのに、僕からの評価は聞かないんだね」

劇場の清掃担当がお芝居について、意見を述べた時に劇作家に聞いてもらえず口にした言葉。そりゃそうだよね。

子供嫌いのちょっとスランプ中の劇作家、子供を望む妻、その夫婦のお隣に引っ越してきた少女。
ほっこり心温まる物語。

お隣の少女のままごとに付き合わされる主人公と、その少女のやりとりが可愛い。
ままごとは言わばエチュードである。設定だけ決めて、後は役者自身が物語を紡いでいく。
少女からのダメ出しにムッとする主人公に笑ってしまった。

大学時代、演劇部で、定期公演以外にプロデュース公演というのがあった。脚本演出がメンバーを集めて行う有志の公演。
結成時に脚本が仕上がってることはほぼ無く、勧誘の際はプロットだけの事が多かった。
なので、練習稽古を観に行って
「ん....これ、どうなる...?」
というザワザワしたあの気持ちを彷彿とさせるシーンが懐かしかった。
制作というマネージャー的な業務の多いセクションにいた私は
「頑張って〜」
と気楽に見守っていたが、当時の私に説教しに行きたい。
「役者と脚本、監督に評価が集中しがちだけれど、お芝居はみんなで創り上げていくもの。もっと真剣に参加せよ」と。

映画だって、料理だって、それこそ一杯のワインやコーヒーだって、本当にたくさんの人の手を介して私のもとへ届く。
こんな時代だからこそ、いつもよりその物語をちゃんと考えながら手に取ろうと思った。

ちょっとブラックな笑いを含みつつ、みんなが歩みよっていく姿が愛おしい。観終わって、にっこり出来る物語。
むぅ

むぅ