ゼロ

ヤクザと家族 The Familyのゼロのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
父も母もいないけど、私には《家族》がいました。

綾野剛さんが出演しているヤクザ映画という認識で鑑賞したのもあるのか、最後がグッとくる作品となっていました。

本作品は3つの時代があり、①1999年(平成11年)、②2005年(平成17年)、③2019年(令和元年)を綾野剛演じる山本賢治の半生を描いています。

正直、①と②については、よくあるヤクザ映画でした。①両親を亡くした賢治が、あることをきっかけに柴咲組にお世話になり、②若頭として出世した賢治が抗争の末に捕まるというオチ。勢いと若さがあるからこそできるギラギラを綾野剛さんは上手に表現していました。3代目松桜会柴咲組の組長である舘ひろしさんは、組長というよりは、父親としての側面で描かれていました。

驚かされたのは③の服役後で、14年後の世界は、何もかも変わっていたこと。柴咲組が暴対法や条例により、人数が激減。組長の体調がおかしいいのは、加齢により癌が転位していた。月の売上が130万円で、幹部クラスが密漁している姿。”貧乏ヤクザ”を見せつけられ、浦島太郎のような気分を味わう賢治と同じ気持ちになりました。

また昔の仲間である細野竜太(市原隼人さん)とご飯を食っても、反社だからもう会うことができないと言われる。好きだった女性に会っても、もう会わない方が良いという始末。

言葉を失くすというのは、こういうことを言うのでしょう。作中のマル暴刑事が口にしていましたが「ヤクザに人権はない」ということでしょう。組長が賢治に対して「お前はやり直せる」と言ってましたが、アラフォーの無職で、元ヤクザが生きていける世界は、この国にはありませんでした。

表題が「ヤクザと家族」ですが、ドキュメンタリーのようなフィクションで、ヤクザ映画らしい終わり方をしていて、何とも言えない気持ちになりました。

何が正解かは分かりませんが、生きにくい社会を私たちは生きているのですね。別の角度から考えさせられる作品でした。
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