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海の上のピアニスト イタリア完全版のHKのレビュー・感想・評価

4.1
以前観たのはもう20年近くも前です。
今回は日本初公開のイタリア完全版(170分)を劇場で鑑賞してきました。

主人公の子供時代や演奏シーンが増えて公開時より約50分も長いそうですが、細部はほぼ憶えてないため比較は無理。どこが増えたのやらサッパリわかりません。まあ約20年ぶりですから。

でも私はこういう伝説やお伽噺・ホラ話の類が大好きなので長時間タップリ堪能しました。

ティム・ロスの『フォー・ルームス』のボーイを思わせるコミカルな演技が初めは過剰に感じましたが後半は落ち着きました(私の方が慣れたのか?)。

親友マックスのトランペッターという設定は、トランペッターでもあった作曲家エンニオ・モリコーネと関係があるのでしょうか?
本作はセルジオ・レオーネとモリコーネのコンビ作品がそうであったように、脚本の段階ですでにモリコーネは作曲を終え、撮影は完成した曲を聴きながら行われたそうです。

船で生まれて生涯一度も船から降りたことがないという設定は、生まれて大きなお屋敷から一歩も外に出たことのない主人公の話『チャンス』(ハル・アシュビー監督)を思い出します。
どちらの主人公も一人の人間として社会的な存在の証がなく、ある意味 “神” を思わせる共通点もありました。
そういえば同じジュゼッペ・トルナトーレ監督の『鑑定士と顔のない依頼人』にも屋敷から一歩も出ない引きこもり女性(?)が出てきましたね。

また主人公の呼び名である“1900” は、やはりこの時代に生まれた2人の主人公を描いたベルナルド・ベルトルッチ監督の大作『1900年』(原題も『海の上の~』の原作のタイトルと同じ“Novecento”=1900年代)を思い出させます。こちらにも父親不在でキリストを思わせる主人公が登場します。この作品の印象的な音楽も本作と同じモリコーネでした。

最後のダイナマイトの爆発シーンもまた、レオーネの隠れた名作『夕陽のギャングたち』を思い出させてくれました。それぞれの主人公のラストの心情にも少し近いものがあったような気もします。音楽はまたしてもモリコーネ。

そして本作の主人公のセリフ「なにかいい物語があって、それを聞かせる相手がいるなら悪くない人生だ」、これは映画を愛してやまないトルナトーレ監督の心情なのでしょう。
偉大なパートナーだったモリコーネは亡くなっても、また新しい出会いによってこれからも我々にいい物語を語り続けて欲しいと思います。

あ、最後に。
『海の上のピアニスト』と『戦場のピアニスト』。海の上の船上と戦場がゴッチャになって紛らわしいと思うのは私だけ?
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