わじ

アナザーラウンドのわじのネタバレレビュー・内容・結末

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

全ての酒飲みは必見!人生におけるアルコールの成功と失敗、教訓と魅力の全てが詰まった(個人的には)ドキュメンタリー作品。

◯感想
「アカデミー賞国際長編映画賞、監督賞」ノミネート&アルコールがテーマになっているということでとても気になっていました。あまりデンマーク作品を鑑賞したことがないのですが、北欧の文化と自然と独特の色彩がとても魅力的でした。

「血中アルコール濃度を0.05%に保つと仕事もプライベートもうまくいく」という仮説を40歳の大人(教師!)が真正面から検証するという一見『ハングオーバー』チックなテーマで、エンタメ・バラエティ要素が多いかと思いきや、今までの自分の在り方(飲み方)や人、お酒との付き合い方を考えさせられる社会派な一面もあります。そしてなによりマーティン役のマッツ・ミケルセンがイケオジすぎてカッコよくて、エロくて、渋くて、だらしなくて本当に魅力的でした。

◯等身大のデンマーク(北欧)文化
「湖を1周するまでに1ケースのビールを飲み干した方が勝ち!」という謎の(めちゃくちゃおもしろそうな)ゲームから始まりますが、それよりも生活の一部に自然が溶け込んでいること、映画全体を通して自然と共生している様が描かれていてとても素敵です。港で新鮮なタラを釣ろうとしたり、カヌーで湖を渡った先で自然度120%の中でのキャンプ、部屋の中に観葉植物が多い点など北欧文化圏のリアルな生活が描かれています。
また学校でも日本に比べて1クラスあたりの生徒数が少なく、授業スタイルも様々、職員室のMTG時の座席の自由さなど驚かされるところがたくさんあります。個人的には音楽室でのデンマーク国家斉唱シーンは鳥肌ものでしたし、大人が普通に机に腰掛けているのは「日本じゃありえないなぁ」と感嘆でした。
映画全体を通して鮮やかな色彩というより、グレイッシュなトーンで北欧の日照時間の短さを感じたと同時にだからこそ雄大な自然、様々な光の描写が印象的でした。

中盤〜終盤のどんどんダメになっていく大人達と、試験をパスして輝く前途有望な学生達の対比は見ていて心苦しく感じましたが、卒業した後の最後のどんちゃん騒ぎで、スッと心が軽くなりました(なぜ)

今作はある程度お酒の失敗を描きつつもラストは何やかんやうまくいってましたが、現実はこんなことなく二日酔いはめちゃくちゃ辛いし、大人としてどうなん??って部分もたくさんあり、コロナ禍で大きく変わった自分のアルコールとの向き合い方を考えさせられる作品でしたが、とても他人事としては見ていられず、全てのお酒を愛する人に見てもらって、お酒を飲みながら感想を語り合いたい作品です(おい!)
わじ

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