わじ

パワー・オブ・ザ・ドッグのわじのネタバレレビュー・内容・結末

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ラスト3分のどんでん返し!4人の主人公の絶妙な関係性に翻弄されつつ、俳優ベネディクト・カンバーバッチに圧倒される作品

◯感想

いやー、参りました。。雄大な自然の景観美と計算され尽くしたカメラワーク、これは劇場で鑑賞すべきでした。アカデミー賞でも作品、監督、主演男優賞など計11部門で12ノミネートされた大本命のNetflix作品です。万人が楽しめる作品!とは言えないかもですが、じっくりと集中して深く作品を鑑賞することが好きな人にはおすすめです。

みんなにおすすめしづらい理由は、本作は全体を通して物語に大きな起伏がなく進んでいくためです。(だからこそラスト3分の展開で溜まりに溜まった感情が爆発するのですが笑)

4人の登場人物が公平に描かれることで誰かに感情移入することなく俯瞰してみることができ、絶妙なバランスを保ったまま物語が進行し、「この4人の関係性に何が起こるのか…」「何がきっかけで綻びが生まれるのか…」をラストまで辛抱強く作品に没頭できた時、最後にすべてがわかるとても丁寧な脚本に仕上がっています。

日常の何気ないシーン、セリフ、カメラワークも計算され尽くしており、その全てがラストに向けられています。明言されずとも4人の関係性やお互いの感情の変化などが浮き彫りになることで、見ているこちら側にも自然と居心地の悪さや嫌悪感を感じられるような描き方をしており、どんどん引き込まれていきました。

聖書から引用されたタイトルの「The Power of the Dog」の意味を知った時、西部劇や恋愛、成長記録を描いた爽やかな印象から一気にサスペンス作品へと変貌する骨太な作品です。

◯ベネディクト・カンバーバッチのこれまでと違った魅力満載の作品

本作では4人の登場人物がそれぞれ絶妙なバランスで描かれていますが、彼の圧倒的な存在感と演技力に脱帽しっぱなしでした。当初、英国生まれでスタイリッシュなイメージの強いベネカンが西部劇を演じることに少し違和感を感じていましたが、タバコの影響でニコチン中毒になりかけたり、実際に風呂に入らず自分を追い込んだり俳優としての役作りへのプライドは圧巻です。
そして、作品を見終わった後だからこそ感じる彼の粗暴で独善的な性格の中にも垣間見える聡明さと、一方で本当の彼の繊細さ、本当の自分をさらけ出すことができない弱さ、恐怖といったバランスが絶妙で、この役は彼にしかできなかっただろうと確信しています。

本作は、ベネカンを主人公としてみるか、4人の関係を俯瞰して作品全体を通した脚本を中心としてみるかで作品の捉え方(印象)が大きく変わってくる味わい深い作品だと思いました!
わじ

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