にくそん

人数の町のにくそんのネタバレレビュー・内容・結末

人数の町(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

うさんくさい「町」のうさんくささが面白くて、途中からどんな暗黒面を見せてくれるんだろうってわくわくしてたんだけど、誰もが政治に関心がなくて、誰もが他人に興味を持てなくて、誰もが絶賛もバッシングも簡単にやって、誰もが自分自身の人生さえ真面目に考えたがらないっていう、わりと私が今住んでいる街とそう大きくは変わらない闇っぷりだった。

フェンスの外に出ようとしたらノイズ鳴るとか、そんなわかりやすいのは現実にないけど。あのノイズ、のんきなメロディーで始まって、途中で音量がはね上がるの、なんなんだろ。毎回そうなので、段差来るぞ!ってちょっと期待みたいな変な気持ちになる。

中村倫也さんは、このアンニュイな役がよくお似合い。ルールに則ってセックスを楽しもうとしたら、相手の女性が簡単にはそうならないムードを出してきたので、いらっとして「え、なんで来たの」って言い出すシーンが見事なクズで、お好きな人にはたまらない感じに。

石橋静河さんの役はあまり魅力的ではなかったけど、なにせ綺麗な人だし、それに妹を救いたいという強い意思は、あの「町」では異彩を放ち、引力を持つだろうなとは思う。

予告では女子二人が指を舐め合ったりして、性に奔放な「町」の描写としてそんなのもあるのね、困ったもんだ(楽しみだ!)と思ってたんだけど、予告以上のことはなかった……。全体に、エログロ入れようと思えばそうできたところでそっちには振らずに、わりと上品にまとめてあって、ちょっと残念なような、でも結構ほっとしたような。

最後は、うーん、まあこの設定だとそうなるしかないのかもと思う。もともと借金まみれで居場所がなくて、小さな子どもと妊婦と自分自身の生活費を稼がなきゃいけないけど住所どころか戸籍もないってねえ。でも、映画なのでもうちょっと面白く(ハッピーエンドにしろという意味ではなくて)終わってくれたらなおよかった。

最後よりも私は、「愛してる」の言葉がとってつけたみたいっていうか借り物みたいで、でも本人はわりと自分のその気持ちを信じてるっぽくて、その上滑り感がせつないと思った。
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