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闘ふ男
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『闘ふ男』に投稿された感想・評価

すえ
4.8
記録

【浪曲】

フィルムで。35mm。

石田民三は初だが、記憶されるべき監督であり発見が遅れたことを恥じなければ。素晴らしい抒情性に溢れており、浪曲と空ショット(母の死を知った直後の空への主観ショットや、窓外の降雨への眼差し)の融合が独得のリリシズム湛える世界を構築している。

しかし抒情に拘泥することはなく、冒頭のカーチェイスに代表されるように運動への嗅覚も鋭敏であるといえる(活劇を撮るということではない)。殊にチェイスには目を瞠る。追う/追われるのモンタージュのみに頼るのではなく、側部から同一フレーム内に疾走する車両を捉えた上、更には背後からのショットで警察を登場させる。この感覚はどこからだろうか、犯罪映画よりもスラップスティックの感触に近い気もする。乱闘シーンを異質な距離のキャメラで捉える感覚も独得で面白い。

各ショットもかなり良いが、特に会話におけるデクパージュが突出している。序盤のカフェ内の会話が妙で、喫煙の動作を含めたアクションが驚くほど滑らかにつながれ、それだけでなく単なる切り返しに落ち着くことのない種々のキャメラポジションで構築されている。正確に数えてはいないがおそらく4,5箇所の位置があり、それらが流麗に繋がるのでキャメラが何台もあるようにすら感じる。その傾向は、顕著なカフェの場面だけでなく、あらゆる会話において意識されているといっていい。寧ろそれに対比されるような形で普通の切り返しが活用されているように思う(再開や出逢いの場面において)。

そこまで強くないが田舎/都会という主題はムルナウを想起させ、また田舎へ移行したあたりからロングショットの感覚が究極的に冴え渡る。往年の巨匠の画面と比肩する強度で、それこそ一部グリフィス的であるとすら思った。浪曲を披露している劇場を上昇・横移動・下降するキャメラの動きも忘れられない、非常に高度な長回しだった。

徴兵に対する肯定的なリアクションは批判の余地があるが、当時の背景を推測するに避けがたいことではあるかとも思う。都合良く出逢いが起こるこの純然な映画を素朴に楽しむことが、何よりの幸福ではないだろうか。

2026,56本目(劇場47本目)4/12 国立映画アーカイブ
いままで自分がみてきた石田民三作品はほとんどが女子〜ヒロインものだったので、タイトルどおりの男の物語、男の友情で描かれた作品で勝手に新鮮。広い車道がドーン、いきなりひき逃げ猛スピードのカーチェイスではじまる斬新さ。セリフひとつない犯人が龍崎一郎なのも衝撃。男たちの再会から浪曲で綴る闘ふ男の半生。今年はあっしも浪花節のひとつやふたつ思いつきでうたえるようになりたい。同郷の北海道から奉公で上京して料亭の女将にまでなった花井蘭子のそれまでの苦労はざっくり省略お察しください、で、切れた鼻緒の縁で慕う蘭子にツンデレしながら相棒にモノも言わずにひとりで行動派ヤルったらヤルのアニキこと岡譲二。雨降り多め、自炊に雨漏りに虎造さんとの共同生活シーンひたすらたのしそう。曲馬団に囲われた可愛いアキ坊奪還→放蕩息子がついに実家帰るも野幌駅前であの東京の宿敵に連れられた妹にばったり遭遇。妹の可愛さ爆発あの娘だあれ?野幌の大自然満喫シーンからあまりにもなタイミングでやってくる赤紙、みているこっちは絶望だけど、これが親不孝放蕩人生をチャラにできる好機だってのにも衝撃な国策ムーブ。無事に再会できてよかったし。「男子有情」も楽しみにしてます。
3.5
虎造の浪花節が五臓六腑に沁みる。物語は大したことないが、時々ハッとするショットがある。無人ショットは小津にも劣らん神秘を感じた。

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