櫻

ベイビー・ブローカーの櫻のレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
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やさしく抱擁するようでも、そっと貸してくれる誰かの肩のようでも、片時もやめない祈りのようでもあった。

この世にうまれおちたものすべて。生きて存在するということを、たとえ何の役に立たなくても侵害されたり奪われていいはずがないし、いなくなってもいい存在などいない。ねえ、あなた。そして、すべての存在。生まれてきてくれてありがとう。やさしい声で、そう伝えてくれたのだと思う。ずっとずっと直接言葉にしないでやわらかく伝えてきた監督が、はっきりと言葉にもして伝えなければいけないと思ったことについて思うと、どうしても泣きたくなる。この世のどこかにいるかもしれない、このつぎはぎしたってばれてしまう束の間の家族を演じた彼ら。それぞれのもう叶わない未来やけして消えない傷たちを、ともに過ごすことが慰め、少し大丈夫にしていく様が愛おしかった。

どうかこの声が伝わるべき場所に届きますように。
櫻