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サマーフィルムにのってのbackpackerのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.0
「弛まぬ努力」

青春は、恋と、友情と、時代劇と、SFと、そして……映画だぁ!!

新時代青春映画としてその名を知らしめた『サマーフィルムにのって』は、なるほど間違いなく、青春映画でございました。

ジャンルミックスによる新しい物語の構築は、いつの時代も最先端。
映画も、漫画も、ゲームも、ドラマも、小説も、建築も、ギアも、写真や絵画ですら、完全に新しいものなど早々には誕生しません。既存のアイデアの隙間をつき、組み合わせることによって、新しいものとするわけです。
本作は、まさにそんなジャンルミックスが成功した好事例。
まさか、高校生の青春モノに、SFはまだしも時代劇まで交えてくるなんて、非常に驚きですね。

箇条書きで良かった点を記載しますと、
・ハダシ、ビート板、ブルーハワイなんて少し外れたニックネームの軽妙さが良い
・全体で見ると少なめと言えるSF要素が、以外としっかり詰められていてニッコリ
・時代劇(特に『座頭市』)への強い愛を受けた超カッコいい殺陣
・キラキラ青春恋愛映画をバカにすんな!という熱量(捨てたもんじゃないんだぜ!と思い知らされました、感服)
・友情と青春と恋愛のバランスが心地良い
・部活内でのカーストへの対抗心と、高校生的友情の再生産にニヤニヤ
等々、色々良かったなぁと思います。


といっても、この作品の高校生の輝きは、特に華やかなリア充青春時代を生きていない身のため、納得感や同意はしかねるのも本音です。
高校の映画部・映研なんて、『桐島、部活やめるってよ』的というか、スクールカースト底辺のイメージがつきまとうわけですよ。
現代の映研って、あんなに華やかなもんなんですか?正直今まで生きてきて、映研が主流的な立ち位置にいたことなんてないというか、常にマイノリティ側だったような気がするんですよね。

何が言いたいのか、要するに「こんな映画部、オレは嫌いだよ!!」ということ。
マイノリティの受け皿がマジョリティに侵略されて、また俺たちの居場所なくなっちゃった、という喪失感すらあります。
「華々しい青春なんて無かったわ」という自分と同類でなければ、別に気にする必要もないですがね……。

とはいえ、映画好きとしては文句なく好きな点も多々ありますし、老若男女問わずオススメできる映画だなぁとつくづく思いましたので、夏の青春映画として、ラインナップに入れようと思います。
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