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オールドのMOCOのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.5
「伯父さんはサンゴが好きじゃない」

 ガイとプリスカの夫婦は11才の娘マドックスと6才の息子トレントと南国のリゾート地を訪れます。
 夫婦は送迎バスを降りるとそれぞれに用意されたウェルカムドリンクを飲み、子供たちはドリンクバーのコーナーへ案内されます。
 姉弟はそこでリゾートホテルのマネージャーの甥イドリブと会話を交わします。トレントとイドリブは仲が良くなり海岸で過ごす大人たちに話しかけます「トレントとイドリブだよ。あなたの名前と仕事は?」
「俺はグレッグ、警察官だ」「私は・・・」
 トレントは人の名前と職業を覚えるのが得意なのです。

 トレントはイドリブから暗号文とアルファベッドの変換表を貰うほど仲良しになるのですが、イドリブはホテル内で遊ぶことを伯父さんに禁じられトレントと遊ぶことはできなくなり、暗号のメッセージをトレントの荷物に忍ばせます。

 ホテルは秘密のプライベートビーチを所有しており、何を気に入られたのか、一家はプライベートビーチに招待されます。

 自然保護区立入禁止の立て札とフェンスに守られた入口で、二組の家族は送迎車を降ろされ、海岸で過ごすためのビーチベッドや大量の食料を渡されビーチまでの一本道を教えられると、運転手は「急な連絡は携帯電話をかけてくれれば迎えに来ます」と言い残し帰っていきます。

 彼らは城壁の様な異様な鉱石の壁に空いている細いトンネルの道を通り世間とは隔絶された雄大なビーチにたどり着きます。

 すでにビーチには一人の男の存在があり、やがてその男と同行していた女性が水死体として発見されるところから不思議なことが始まります。

 プライベートビーチに招待されたのは医者のチャールズと妻クリスタルと幼い娘カーラ、母アグネスの一家。
 遅れて到着する看護師ジャリンと心理学者パトリシアの夫妻。
 人気ラッパーのミッドサイズ・セダンと同行者の女性。
 そしてガイの一家。

 水死体の女性はセダンの同行者だったことからセダンが疑がわれるのですが、さらにアグネスが突然死し、マドックス、トレント、カーラの3人の子供は急速に成長して青年の体つきになっていることに皆が気づきます。
 
 強烈な圧力を感じて気を失い車を降りた入口まで戻ることが出来ないトンネル、携帯の電波が届いていない海岸・・・彼らはビーチからの脱出を考えるのですが、波の激しい海を泳いでホテルに帰ることはほぼ不可能、命を失う可能性が高いのです。

 全員で集まって話してみると、少なくとも一人は家族の中に基礎疾患のある人がいることが判明します。

 腫瘍を告白したプリスカの腫瘍はあっという間にメロン大に発達しチャールズによる腫瘍摘出手術が始まるのですが、メスを入れると同時位の早さで傷口が治癒して塞がれていく中での強硬手術になります。
 ここでの時間の流れは完全に速いのです。
  トレントとカーラの性的発達も速く、二人は人知れず肉体関係になりカーラは出産することになります。驚異的な時間の流れに周りも、赤ちゃんもついていくことが出来ず、あっという間に死を迎えてしまいます。

 統合失調症がはげしくなったチャールズは妄想から、ナイフでセダンを刺し殺してしまいます。

 なんとか状況を変えようとジャリンは海を泳いで、カーラは崖を登って脱出を図るのですが、2人とも命を落とし、パトリシアは持病のてんかんの発作を起こして死んでしまいます。
 急速な老化で夕方にはガイは視力、プリスカは聴力を失い始めます。

 旅行前離婚を決めていたガイとプリスカは穏やかに関係を修復していくのですが、再び異常行動するチャールズにガイはナイフで刺されてしまいます。
 ちょうどそのころマドックスとトレントは海岸の砂に埋もれたジッパー付の保存袋に保管されたプライベートビーチの秘密が記されたノートを発見します。

 プリスカはマドックスとトレントにチャールズから身を守るためにトンネルに逃げるように言い、錆びたナイフでチャールズに立ち向かい、チャールズはナイフの錆びが原因の感染症で死んでいきます。

 マドックスとトレントは狭いトンネルの中でクリスタルに出会います。クリスタルはカルシウム不足で背中の曲がった自分を見られることを嫌い錯乱し何度も何度も洞窟の壁に体をぶつけて骨折しては骨がくっつき、骨折しては骨がくっつきこの世の生き物とは思えないほど不思議な体つきになり死んでいきます。
 夜が更けガイとプリスカは老衰で息を引き取ります。

 朝を迎え、ビーチに存在するのはトレントとマドックスだけになり。トレントはふとイドリブから渡された手紙があったことを思い出します。そこには暗号で「おじさんは珊瑚が嫌い」というメッセージが書いてあり、目の前の海の一角には珊瑚礁が・・・。
 二人はノートを手に珊瑚礁へ向かいます。


 何故プライベートビーチで歳をとるのか?という謎解きを探るのではなく、何故歳をとるプライベートビーチに招待されたのかの謎解き?が重要なスリラーです。
 ホテルのバックには大手の製薬会社ウォーレンがあり、疾患のある宿泊者は知らず知らずのうちに、できる限り外部との接触が無いようにホテルに連れてこられ、プライベートビーチに送り込まれていたのです。

 プライベートビーチでの1時間は、ほぼ2年に匹敵しているのです。1日経てば48才、歳をとってしまうのです。製薬会社ウォーレンはこの不思議な現象を利用した実験を過去から続けているのです。


 11才6才は十分賢い年齢なのですが学校教育を受けることなく歳をとってしまった大人になった子供たちの知恵は発達するのでしょうか?暗号解読を脱出に結び付ける知恵が備わっているのでしょうか?昨日起こったことを50年後覚えていられるでしょうか?時間の流れが早いのは肉体だけで食べ物は影響ないのか?などの疑問が湧いてきます。

 主人公はガイとプリスカの夫婦・・・が、いつの間にかその子供たちマドックスとトレントに置き換わっている展開・・・。
 ウェルカムドリンクに隠された秘密・・・。
 なんとなく伯父の悪行に気が付いて暗号を渡すイドリブ・・・。
 ホテルの客に頼りになる警察官をなにげに仕込んでいる・・・。
 は、さすがシャラマン。映画は抜群の展開になります。


 ところで、チャールズが気にして盛んに質問するマーロン・ブランドとジャック・ニコルソンが共演した映画は1976年の『ミズーリ・ブレイク』、映画の本筋には全く関係ないみたいですね。
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