【ヴァンパイア映画のススメ】
『ヴァンパイアvs.ザ・ブロンクス』
(2020)
◆本作のポジショニング
人類 ←← (地上げ) ←← ヴァンパイア
〈見処〉
①現代版「ロストボーイ」、
黒人の街をヴァンパイアから救う!
・『ヴァンパイアvs.ザ・ブロンクス』は、
2020年9月にユニバーサル映画からコロナ禍にて劇場公開が困難な本作の配給権をNETFLIXが取得し、2020年10月に配信開始したホラー・コメディ。
・本作の舞台はニューヨークの北部に位置するブロンクス地区。古くからアフリカ系とヒスパニック系の住民が多くを占め、困と治安に苦しんできたこの地区も、急速に高級化が進み、古くからの店舗は次々と閉店。入れ替わるように高級ショップの開業予告のポスターが増えている。
・本作の主人公、リトル・メイヤー(小さな市長)と呼ばれるミゲルとその親友、ルイス、ボビーの3人の少年は、愛してやまない地域の食料雑貨屋を救うため、ストリートパーティを開いて寄付を募ることに奔走していた。
・しかしながら、地域の店舗を買収していた不動産業者の再開発の目的は、ヴァンパイアにより人々の血を吸い取ることにあった。住民の命を吸い尽くそうとする邪悪な陰謀の存在を知った3人の少年は、大切な街と愛する人々を救うため勇気を出して立ち上がる…。
・少年たちは邪悪で超自然的な企みに感づくが、親や警察はつくり話だと取り合ってくれない…本作は、現代のニューヨークが抱える社会問題をベースに「ヴァンパイア」×「ジュブナイル」という、古くからある映画題材を用いた作品である。
②結び…本作の見処は?
◎:「人が消えても誰も気にしない」ブロンクス地区を舞台に、「白人=資本家階級=ヴァンパイア」と「有色人種=労働者=捕食対象」の対比が描かれている本作のコンセプトは非常に現代的。
○:「オーソドックスなヴァンパイアの能力」「ロストボーイを想起させるシーン」「ブレイドを参考に吸血鬼退治」…ヴァンパイア映画が好きな鑑賞者には、好意的に受け取られる作品。
○: インスタライブを使用した配信シーンなど、現代風演出も良い。
▲: タイトルからイメージされるような地域住民の一致団結感は、期待には及ばず。
×: ヴァンパイア映画としてスリルに乏しく、ジュブナイル映画としても甘酸っぱさの微塵もない。コメディとしても、笑いの量は得られず、中途半端感のある仕上がり。いずれかに寄せたほうが良かったであろう、もう少しで名作になれただろう作品。