ゴトウ

Everybody's Talking about Jamie~ジェイミー~のゴトウのレビュー・感想・評価

3.5
ドラァグクイーンになりたい!と願う少年と、彼をめぐって周りに巻き起こる騒動を描くミュージカル。そもそもドキュメンタリーが下敷きということもあって、「実話に歌と踊りを加えた」の文言通り、大げさな盛り上げや脚色は控えめ。曲の良さとビジュアルの納得感は完璧。元々は映画館で上映される予定だったらしいけれど、コロナで延期を重ねてAmazonプライムオリジナルになったみたい。普通に公開される映画と何が違うのか。

かなり悪し様に描かれる父親、教師、いじめっ子に関しては、ご本人らの意見が気になるところ。息子のセクシャリティを受け入れられない父親、ステレオタイプ、ホモフォビアに凝り固まったいじめっ子はわからなくもないのですが、「現実みろ、夢を持つな」みたいなことを人の話も聞かずにゴリゴリ押し付けてくるのがすごい。Based on a true storyだけど誇張されているのだろうか。欧米の学校=進歩的、みたいなイメージがあるけど、それらはほぼ「アメリカの学校」(映画やドラマの中の)か、北欧の学校に関するニュースとかからの偏ったものから来ているので、ほとんどイギリスの学校教育のイメージが湧かない。お母さんの偉大さというか、どうあってもジェイミーを全肯定しかしないという意気込みの激しさが一番泣かせるかもしれない。

ホモフォビアガキ大将、唯一仲良くしてくれるイスラム教の女友達とか、登場する人々はやや記号的かつスポットも当たらない人が多い。クラスメイトとかほぼバックダンサーだし。ただそのせいで物語に説得力がないとかいうことではなく、むしろ個人的な人間関係や小規模なトラブルの折衝が主軸からブレなくてよかったとも思った。「自分がどうあるか、ありたいかが重要である」ことと、「それが必ずしも周りの都合を無視したりあえて破壊したりするものではない」ことがコンパクトにまとまっていて良い。良くも悪くもその時々で周囲の人の態度は変わるし、全ての人々と密接な信頼関係を築く必要もないという。この種の“Love yourself”ものは他者への視点が抜けていたり排他的になる場合がとても多いので、一緒に踊ってはいるけどたくさん会話したりはしないというミュージカルの形にしたのが好ましく感じた。
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