Dick

スレイトのDickのネタバレレビュー・内容・結末

スレイト(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

❶相性:上。
★韓国発のパラレルワールド・アクション。
★低予算のB級作品だが、ヒロインにキュートな魅力があること、呼び物のアクションに迫力があること、脚本がしっかりしていること、の3つの長所により気楽に楽しめる。

➋時代は現代、舞台は韓国、そして、この世界に並行して存在する別の世界、「パラレルワールド」。
★便宜上、元の世界を「A世界」、パラレルワールドを「B世界」と名付ける。
★画面サイズが区分されているので分かり易い:「A世界」はビスタ(アスペクト比1.85)、「B世界」はシネスコ(アスペクト比2.35)。

❸タイトルの「スレイト(英語:Slate)」とは「カチンコ」のこと。世界中の撮影現場において、カメラと共になくてはならないものがカチンコである。
★正確に言うと、「Clapperboard」が「カチンコ」で、そこに書かれた情報が「Slate」であるが、日常的には「Slate」を「カチンコ」と同義に扱うことが多い。

❹本作は、次の6章に区分されて描かれている。
第1章:無名俳優の娘
第2章:不思議の国のアリス
第3章:思いがけない発見
第4章:2回目の裏切り
第5章:カチンコ
第6章:主人公の道

❺主人公は1990年生れの売れないアクション女優、ヨニ(アン・ジヘ、30歳):
①「A世界」。無名俳優の娘であるヨニは、幼いころからアクションスターになることを夢見て、剣術をメインに修行を積んできた。
②成人してからは、何度もオーディション受けているが、ありつけるのは、エキストラとスタントのみ。
③今回も、スタントとして、撮影に臨んだヨニ。カチンコが鳴って演技を開始したが、どうも様子がおかしい。
人々の言動が台本と違っていて、傷ついたり死んだりするのが演技でなく本当のようだ。下手をすれば自分も殺されてしまう。
④ヨニは何らかの力により、「B世界」にワープしてしまったのだ。そこは悪のボスに牛耳られた弱肉強食の世界。
⑤向かってくる敵を必死でなぎ倒していくヨニ。そんなヨニの目覚ましい働きを目にした村の領主は、彼女を守護神の「鬼剣」と思い込み、村の救出をヨニに託す。
★さあさあ、お立ち会い。お待ちかねの大活劇の始まり、はじまーり(笑)。
★『キル・ビル』シリーズのユマ・サーマンを彷彿させる日本刀の殺陣は見応えあり。
⑥ヨニは、村を救うために、仲間たちと力を合わせ、バッタバッタと敵をやっつけていくが…多勢に無勢、強敵を倒せば、更なる強敵が待ち構えていた…。
⑦さすがのヨニも力尽き、瀕死の重傷を負って倒される。
★無念なり。よく頑張ったね、ヨニ。RIP。
★でも、ご安心あれ。「神はあなたを見捨てない」。
⑧「B世界」にワープしたのはヨニだけではなかった。ユーチューバーの若者が3年前から来ていて、取材活動をしていたのだ。彼は、ヨニがワープした原因が、カチンコにあることを突き止め、そのカチンコを使えば、「A世界」に戻れることを教えてくれた。
⑨ヨニはそのカチンコにより、無事「A世界」に戻ることが出来た。無傷だったことは言うまでもない。
★目出度し目出度しのハッピーエンドでございます。お楽しみ様でした(笑)。

❻特記事項1:「主人公」とは?
①当初、ヨニは「主人公でなければ存在価値がない」と考えていた。
②本作の中で、禅や仏教で使われる「主人公」の意味について説明がある。
仏教用語による「主人公」とは、「心の乱れや、迷いに惑わされず、理想の姿に近づこうとする本来、備わった素質を指す言葉」で、「本当の自分」を意味する。
③当初、ヨニが考えていた「主人公」とは、フィクションである映画の人物のことだった。それが、「B世界」で、善良な人たちを守るため、命をかけた体験を通じて、実際の世界(「A世界」)での「本当の自分」を見出したのである。
④映画のキャラが「端役」であっても、自分の人生における「主役」とすることが出来るのである。
★本作は、単なるB級アクションに見えるが、よく吟味すれば、こういう深い意味が含まれている。
★B級映画万歳!

❼特記事項2:キャスティングのお遊び:
①エンドロールで映像と共に示されるが、「B世界」のキャラは、「A世界」では別のキャラとして、登場していたのだ。
②本人たちは、そのことを全く知らないというのが愉快である。
③つまり、容姿はそっくりでも、DNAが違うということだろう。
★本作のどこにも言及がないので真相は不明である(笑)。
★クリストファー・ノーランあたりなら、理由のある説明をしてくれただろう(笑)。

❽トリビア:パラレルワールドをテーマにした映画
①「タイムトラベル」をテーマにした映画は多いが、「パラレルワールド」関係は意外に少ない。全部は観ていないが、思いつくままに列挙すると:
②その名もズバリの『パラレルワールド・ラブストーリー(2019日)』(2019.06鑑賞/60点/3B★★★)は凡作だった。
③邦画のトップは『千と千尋の神隠し(2001日)(アニメ)』(2001.07鑑賞/100点/4A〇★★★★★)。
④『ターン(2001日)』(2001.12鑑賞/85点/4B〇★★★★)も長く記憶に残る秀作である。
⑤洋画のトップは、『イエスタデイ(2019英)』(2019.10鑑賞/85点/4A〇★★★★)。
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