きまぐれ熊

映画大好きポンポさんのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
2.6
ちょっと長いっすわ〜。

レビュー見てると、結構評判が良いから期待してたんだけど率直に言うとムカつくシーンが多かった。

色々言いたい事があるんだけど、全体的にはアニメーションの作画は動きもキャラクターデザインも高品質で全編素晴らしい。丁寧に調査されているハリウッドの景色を反映した背景も凄い。
音響もめっちゃ良い。挿入歌も力がある。花譜ちゃんの歌は結構好き。

でも脚本が見事に全ての足を引っ張ってる。
キャラクター造形が、形だけで劣等感を持つ視聴者を引っ掛けるような悪どい作りになってて、悪い意味でジャンプの読み切り作品をアニメで見てるような気分。
むしろこれだけの作画リソースをこの脚本で消費してしまった事に勿体無いとすら思ってしまう。
キャスティングも声の演技に対して読解力がないのかな?ってレベルで記号的なチョイス。センスがない。
具体的には新人女優役と大塚明夫と小山力也。ナタリーみたいな成長する新人役にこそ振れ幅の必要なベテラン声優を使うべき。対するベテランお爺さん俳優とか、銀行サイドの主人公の上司には、声のイメージで人格が判断できない人を起用してこそ場面に緊張感が出るのに、パブリックイメージでいい人そうなイメージが付いてる大塚明夫と小山力也を使うのマジでセンスない。この配役のせいで退屈になってるシーンは少なくない(一応フォローしておくけど役者じゃなくて起用側が悪いって意味です)。


なまじ作画がいい分、脚本の稚拙さが目立ってしまい、展開の弱さをアニメーションのパワーで押し切ろうとしているような印象を感じてしまい醒めてしまうシーンが多かった。
日本のアニメーションって記号化に特化して先鋭化させてきた側面があるので、典型的なよくあるシーケンスをやろうとするとシーンの始めに意図が読めちゃって、結果、読めた通りの事が後追いで展開されてしまう。それでもペースが早ければまだいいが、セリフ運びが無駄に丁寧なのでより退屈に感じるシーンが非常に多い。
そのせいで90分でも死ぬほど長く感じる。映画の様な3幕構成でそのままストーリー展開するのにはアニメでは無理がある。
成長する主人公を3人用意してるけど欲張りすぎ。後述するけど1人いらないと思う。


題材としても、なんでこの浅さで映画論を語ろうと思ったのか不思議に思うレベルで表層的。
ていうかシロバコみたいなお仕事アニメをやりたいのか、映画というエンタメの面白みを語りたいのかが、前半と後半でブレちゃってるのでせめてどちらかに絞るべき。

劇中映画のシーンと本編物語のオーバーラップというアイディアを活かす展開は練られているし、一部アニメでしか出来ない表現もあったけど、そもそもこんなアイディアは実写映画でも擦られまくってるわけで、全編通して「アニメでしか出来ない事」をやらないのなら実写映画でいいじゃんとなってしまう。
まず選択した題材がハードルとして高すぎる。


良かったとこととしては、主演女優のファーストカットをバッサバッサ切ってくとこ。ここは編集に求められる無情さを、経験者でしか語れない説得力で語ってて非常に良かった。全てのコンテンツを作る上で1番大切なのは「何を削るか」なので、そこをもうちょっと全編メインに押し出しても良かったんじゃない?と思う。上映時間が90分ってポンポさんのセリフだけではちょっと伝えきれてないでしょ。
ただ尚更、この映画に要るか?ってシーンが序盤中盤を占めてた事が痛い。物語のメッセージを体現するならもっとスリムに1時間くらいでまとめてほしかったな。

具体的には融資の話ははっきり言って要らない。今時のサクセスストーリーを入れたかったのは分かるけど別にこの映画でやんなくてもいいやん。
新人女優&新人監督を軸とした化学変化のストーリーにしてくれると見やすかったと思う。

ポンポさんのキャラ立ては良かったけど、ちょっと綺麗にしすぎかも。ジンくんと既に関係を持っているくらいの方が生々しくて共感しやすかったかも。(そういえばポンポさんて何歳設定なん?)
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