マンボー

分断の歴史 朝鮮半島100年の記憶のマンボーのレビュー・感想・評価

3.7
現在も北朝鮮と韓国とに分断されている朝鮮半島の歴史を、分断以前の時代から振り返り、片側の国に片寄ることなく、大国の思惑に翻弄されてきたその歴史を、間断なく描き抜いたフランス産のドキュメンタリー映画。

北朝鮮建国の父とされる金日成が、抗日活動家だったことから始まり、知らなかったことも多く、また2000年代に入ってからも、未だに大国の気まぐれな首領のほぼ思いつきのような態度に強く影響を受け、対抗するべく政策を打ち出す北朝鮮と、そんな北朝鮮に対して、その時々の大統領の思惑で対峙の仕方がガラリと変わる韓国という、一見流動的に見えて、実はさほど変わらない政治のせめぎ合い、緊張と緩和の構図自体を確かな取材力で丁寧に描き出し、説得力ある見せ方を備えていた力作。

一見すると、テレビのよくできたドキュメンタリーとそれほど変わらないように見えるが、観れば観るほど、知れば知るほど、その丁寧でロジカルな作りの確かさに、お金を払って見る価値がある作品だと感じた。

本作を冷静に見ると、いかに朝鮮半島の庶民たちが、大国や自国、隣国の一部の政治家にとって、その時都合のよい思惑に翻弄され、望みや願い、祈り等がいかにないがしろにされてきたのかが、まざまざと浮き彫りにされている。

自分や自国と同じように、他国や他人を思いやれれば、早晩解決できそうな問題だが、複雑化しどんどん結び目を解くことが難しくなって、もはや誰かの痛みなしにはほどけないほどの状態のようにも見える虚無。そしてそれでも消えない揺らめく小さな炎のようなかすかな希望。

そして日本も日本人も、この朝鮮半島の二国の隣で、良くも悪くもそれぞれに影響力を持ちえる立場にあることに、もっともっと自覚的であるべきだと思う。