YYamada

この茫漠たる荒野でのYYamadaのレビュー・感想・評価

この茫漠たる荒野で(2020年製作の映画)
3.7
~脱「勧善懲悪」の「新西部劇」~
【ネオ・ウェスタンのススメ】
『この茫漠たる荒野で』(2020)

◆本作の舞台
 テキサス州
◆連関する時代背景
・1845年 / テキサス共和国の併合
・1865年 / 南北戦争の終結
★1870年 / 本作の舞台

〈見処〉
①監督:グリーングラス×主演:ハンクス
 による、西部劇ロード・ムービー
・『この茫漠たる荒野で』(原題:「News of the World」)は、ポーレット・ジルズが2016年に上梓したベストセラー同名小説を原作として、2020年に製作された西部劇。
・本作の舞台は南北戦争終結から5年、1870年のテキサス州。退役軍人のジェファソン・カイル・キッド(トム・ハンクス)は、各地を転々としながら世界のさまざまなニュースを読み伝える仕事をしていた。
・旅の途中、ネイティブアメリカンに連れ去られ、育てられた10歳の少女、ジョハンナと出会う。英語もわからず見知らぬ外の世界に困惑していた彼女に見かねたキッドは、ジョハンナを親族のもとへ送り届ける役目を引き受ける。2人は厳しい自然や人間たちによってもたらされる試練に直面しながらも、テキサスの荒野を進んでいく…(eiga.comより抜粋)
・本作は『キャプテン・フィリップス』(2013)に続くポール・グリーングラス監督とトム・ハンクスのタッグにより、南北戦争後の各地を旅する退役軍人の男が、孤独な少女との旅路を通じて心を通わせていく姿を描いた人間ドラマ。アメリカでは、アカデミー・ノミネート要件を準拠すべく、コロナ禍の2020年12月に公開。日本では劇場公開は見送られ、2021年2月にNetflixにて独占配信された。

②分断するアメリカ
・本作の舞台であるテキサス州は、過去にスペイン、フランス、メキシコ、テキサス共和国、アメリカ合衆国、アメリカ連合国(南軍)、アメリカ合衆国と6つの独立国の間を流浪した歴史を持つ。
・とくに、本作に描かれていた時代は、1865年5月にテキサスが交戦場となった南北戦争の最後の戦闘(パルメット農場の戦い)の記憶も新しく、旧南軍に属していたテキサス州にとって、北部との融合を拒絶する民意も残存。トム・ハンクス扮するキッドが「分断されたアメリカ」融和のために、北部のニュースを届ける姿は、トランプ・バイデンにの大統領選にて民意が二分された現代アメリカと比較する本作批評が多かったことに触れておきたい。
・なお当時のテキサス州は、南北の緊張に加え、メキシコ国境の緊張、カイオワ族やコマンチ族など好戦的とされる先住民との衝突など沢山の火種を抱えた地域に対して、「ゴー・ウエスト」により大量の労働者が流入してきた混沌の時期が本作の舞台である。

③結び…本作の見処は?
◎: 広いテキサス州内を移動する旅を通じて、主人公2人の心の距離が縮まる様が温かい。まさに「西部開拓時代のロード・ムービー」。
◎: 訪れる西部の街並みをそれぞれ全遠で捉えたセット(CG?)にて、当時の街の規模が理解出来る。過去の西部劇には観られない貴重な映像体験。
▲: 中盤の銃撃戦は少々長くてダレる。グリーングラス監督の『ボーン・スプレマシー』のような、ハンディカム撮影の
ハイテンポ・アクションを期待していただけに残念。
▲: 西部劇は微妙な邦題作品が多いが、本作もしかり。「茫漠(ぼうばく)…とりとめがないほど広いさま」って、作品に関係あり?
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