平野レミゼラブル

DIVOC-12の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

DIVOC-12(2021年製作の映画)
3.2
【「家族と人情」「ザ・エンタメ」「詩情」に溢れた創作賛歌の玉手箱】
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受ける創作者や俳優達の活動を応援するという名目で、ソニー・ピクチャーズが発足した短編映画プロジェクト。
『ヤクザと家族 The Family』の藤井道人、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎、『幼な子われらに生まれ』の三島有紀子といった話題作を生んだ注目の若手監督がそれぞれチームを組み、各チームに公募を含む新進気鋭の監督が集った計12人によるオムニバスとなっています。
まだまだ予断を許さないとはいえ、とりあえず緊急事態宣言も解除され、動員人数も元に戻りつつある映画館ですが、それでもこのコロナ禍がもたらしたダメージは大きく、だからこそ創作をもって対抗し、且つこの過酷な状況でも前向きに若手を育てようという志が素晴らしいですね。また、支援活動の一環として興行収入の一部がコロナの影響を受けた芸術・文化活動のサポートのため、日本芸術文化振興基金に寄付されるのも良いことです。
因みに映画のタイトルは、12人のクリエイターによって「COVID」をひっくり返したいという想いを込めてつけられたそうです。

1作品10分程度であり、各チームにテーマが掲げられているものの、作品内容は割とフリースタイルです。流石にコロナ禍であることを意識したような作品は多いのですが、特にその辺りは別に縛っていないため、かなり個々の色が出ている感じですかね。
各チームのテーマは三島チームが「共有」、上田チームが「感触」、藤井チームが「成長への気づき」だそうですが、正直わかるようなわかんないような……ですね。
一応、チームごとの特色は感じられるんですけど、ぶっちゃけ共有とか感触とか言われても漠然としすぎているというか……個人的に勝手にテーマをつけるなら、三島チームが「家族と人情」、上田チームが「ザ・エンタメ」、藤井チームが「詩情」って感じでしょうか。
じゃあ、ここからは実際に映画で流されたチーム順にそれぞれ感想を書いていきます。


・三島チーム「共有」→個人的には「家族と人情」
僕が唯一、この中の誰一人として作品を観ていないチームですね。
なので、一番先入観なく観られた気がしますが、お話自体も3チームの中で一番クセが少なく、家族や友人などをテーマにした普遍的な作品が多かった気がします。
あと裏テーマとしては「お金」があるんじゃないかと思って、『YEN』は「円」でまんまお金絡みだし、『よろこびのうた Ode to Joy』も大金がフィーチャーされます。お金もまた人々の手を渡って「共有」されるものであり、そうした繋がりを表している…と考えるのは無理矢理ですかね?では以下、各作品寸評。

『睡眠倶楽部のすすめ』
監督:加藤拓人
キャスト:前田敦子
何か社会や家庭に問題を抱えてしまい、安眠できなくなった人が集う睡眠倶楽部の、静かで殺風景だけどだからこそ落ち付く空間から、喧噪の中に出て元の生活に戻れるかを描く作品。
変化のない「真っ白」な倶楽部から徐々に色彩や音を取り戻し、外界のけたたましさといかに向き合うかってことがテーマなのでしょう。先日観た『サウンド・オブ・メタル』の逆みたいな感じで、喧噪の中から安らぎを見つけて迷子から脱することが出来るのかという流れが自然です。風景や生活音が効果的に用いられ、テーマに対する説得力をもたらしています。
睡眠倶楽部はコロナ禍による巣ごもりのメタファーでもありますが、1発目の映画としてはちょっと大人しすぎる印象もあるかな。


『YEN』
監督:山嵜晋平
キャスト:蒔田彩珠/中村守里/渋川清彦
インスタントカメラで人物を写しては値段をつけ、価値の低いムカつく、ウザい、イケてない写真を川流しにするという、かなりどうかしている趣味を持つ女子高生2人の関係を描いた青春モノ。
人の価値を勝手に値踏みしてんじゃねェ!メスガキがァ!!とも思うが、案の定自業自得・因果応報的に値踏みのツケを払わされ、2人の仲も壊れてしまうという。ある意味、万能感に酔った青春時代故の過ちと、しょうもない焦燥感の現れであり、それらが「円」という単位に集約されるのが良く考えられています。
その上で「円」に代わる単位を創り出し、青春の在り方がオンリーワンなものへと修復される友情の在り方も独特で面白い。


『海にそらごと』
監督:齋藤栄美
キャスト:中村ゆり/髙田万作/松浦祐也
亡くなった父親の写真を頼りに、自分を生んで以来いちども面識のない母親に会いに行った少年のお話。
割とオーソドックスな人情親子モノですが、こういうのって父親に会いに行くパターンの方が多いような気がするんで珍しい気がしますね。
筋のわかりやすさや海辺のスナックの雰囲気といい、割とシンプルに良いんですが、流石に10分のランタイムでは面識のない親子が絆を育むには描写不足に感じてしまうので惜しいですね。


『よろこびのうた Ode to Joy』
監督:三島有起子
キャスト:富司純子/藤原季節
よろこびのうたに合わせて「焼肉たべたいホルモンじゃな~くて♪アイスはやーっぱりハーゲンダッツ!」と歌う貧困の老女が、怪しげな眼鏡の若者に誘われて非合法ビジネスに勤しみ、大金を手に入れるお話。
誰かを犠牲にすることで手に入れるお金もあれば、誰かの善意によって手に入れるお金もある。そんな循環に罪悪感とも解放感とも言える感情を抱きながら「金に糸目をつけずに食べるハーゲンダッツ美味ェ!」と束の間の贅沢を享受し、共に喜ぶ老女と青年。
正直、本作品群で2番目くらいによくわからず、カラオケで熱唱する藤原季節と海辺でのラストシーンがひたすら謎なんですがなんなんでしょう、これ。あと棒付きのハーゲンダッツって、僕食べたことないですね……


・上田チーム「感触」→個人的には「ザ・エンタメ」
公募のエバンズ未夜子監督を除いて、全員の作品を観たことがあり、なおかつ全員のファンであるという正に僕の為にあるようなチームであり、そして全体的にエンターテイメント色が強めで楽しい打率の高い作品群でしたね…!
むしろ、テーマの「感触」の意味が全くわからず、いやこればっかりは「ザ・エンタメ」のテーマにした方がいいだろ!!って気持ちになる。
ファンタジー、ミュージカル、ゾンビと来て最終的に全ての映画のジャンルを横断することになるため、盛り沢山さが物凄い。加えて各監督があまりにやんちゃをしすぎており、このチームだけ明らかに毛色が違うんですが、まあ面白けりゃいいんですよ!!
裏テーマは「レトロ」でしょうね。エンターテイメントの本質は昔から変わらないってことなんですよ、ええ。古臭くたって面白いモノは面白い!!テンション高いままに寸評だ!!

『あこがれマガジン』
監督:エバンズ未夜子
キャスト:小川紗良/横田真悠
スターであることを後悔しているようで、その実マウント取っているだけのムカつくアイドルと、それに付き合わされる友人の構図で始まったかと思えば、次第に現実と憧れと妄想の垣根が曖昧になり、次々立ち位置が変わっていくトリッキーなお話。
昭和のアイドルのお話かと思ったら、現代のお話だし、憧れを写す鏡の創作を交えて実に惑わせてくれます。一番、短編映画らしい短編映画に感じましたね。昭和レトロポップな雰囲気づくりも良いです。
話の内容としては結構煙に巻かれた印象も強いんだけれど、そこも含めてショートショートの味として楽しめる。


『魔女のニーナ』
監督:ふくだみゆき
キャスト:安藤ニコ/おーちゃん
まさか10分間で正統派ミュージカルをやってくるとは思わなんだ……
日本に西洋の見習い魔女がやってきて、家出中の少女と出会い協力して一人前の魔女になる試練をこなす…というありがちな流れを、特に恥も衒いもなくやってのけるので素直に楽しいです。『魔法にかけられて』みたいな「急に歌うよ」に対するシニカルなツッコミとか入れてくると思ったら、それすらない直球勝負だから逆にビックリだよ!いや、英語で歌ってるけど背景では畑仕事の図は「現代日本でミュージカルやる時の無茶」を表していて若干捻ってはいたけれども!!
あまりに衒いなくやってのけるもんだからちょっと観ていて気恥ずかしくなる側面はあるっちゃある。子どもが観たら結構喜んでくれるでしょうけど、『DIVOC-12』自体は子ども向け映画ではないしなァ……


『死霊軍団 怒りのDIY』
監督:中元雄
キャスト:清野菜名/高橋文哉/大迫茂生
『一文字拳』シリーズや『いけにえマン』シリーズにスマホを拾った方など、数々のB級カンフー映画やホラー映画、話題作のパク…リスペクト作品を製作して、インディーズ界隈に自分含めたカルトな信者を構築した中元雄が帰ってきた!!
一昨年の『はらわたマン』でインディーズ卒業宣言をしてから音沙汰がなかった(Vシネは監督していたみたいですが)ので心配していましたが、同じインディーズ界隈の希望の星たる上田慎一郎チームの下でメジャーデビューですからね。中元監督の初お披露目にこれほど相応しい舞台もないんじゃないでしょうか?

んで、映画の出来が12作品中、頭抜けて面白い!!カラテマスターで、趣味はDIY、ホームセンターに勤める男勝りの女ランボーことマリが職場に突如押し寄せてきたゾンビ(死霊?)を理想(女らしさ)と現実(滅茶苦茶強い)の狭間でちょっと悩んで「よしやっぱブチ殺す!!」と大暴れする潔すぎるお話。
コロナ禍だから感染系はちょっと…と全く日和ることなく、また割と真面目に固めてきた周りと歩調を一切合わせる気のない題材チョイスがゴーマイウェイすぎて素敵すぎます。これでこそ、俺達の愛した中元監督だぜ!!メジャーデビューしても、ちっとも変わりゃしねェ!!

あと純粋に作品自体もよく出来ていて面白いです。短い中でマリのキャラを一気に立たせ、ツッコミや囃し立て要因であるサイトーや店長とのテンポの良い掛け合いは笑えるし、説明一切抜きにゾンビ出てきてアクション映画になる流れが急転直下すぎて気持ち良いです。
女らしさの象徴たるハイヒールを開戦の狼煙にするアイデアも冴えてるし、いざ戦いだしたらゾンビ映画どころかブルース・リーとかのカンフー映画も混ざり出す見境の無さが楽しすぎる…!!
清野菜名ちゃんのアクションもキレキレだし、あとやっぱり中元監督、純粋にアクション撮るの滅茶苦茶巧いですね……短い尺の中で観やすく印象に残る動きを連発していて、非常にスピーディー。
ナカモトフィルム常連の工藤Dは相変わらずの一瞬の輝きを見せるし、茶谷優太くんやキャッチャー中澤さんもゾンビの中に混じっていたぽいです(流石に確認できなかった)。しかし、いつも決まってサイトー役やっている齊藤友暁さんが今回サイトーではなかったのは残念でしたね……だんだんナカモトフィルム追っかけている人じゃないと伝わらない話になってきてしまった。

唯一文句をつけるとするなら、主人公が趣味に挙げている割にちっともDIYしてないってことなんですが(工具を次々身に付けてデーン!ってなるコマンドーパロは手作り感溢れているけどDIYではないと思う)、最後の最後に「これがDIYなのかよ!!」って最大の手作り感が現れて爆笑しちゃったんで良いです。
どう考えても一切のメッセージ性がなく、またやりたい放題にリス…パクりまくっており、あとに何も残らない心底くっだらねー作品なんですが、終始ゲラゲラ笑えて楽しかったんで一番好きな作品でしたね……むしろこれだけで観に来た甲斐があったというか。
本作品群の中で、これだけが館内で笑い声が漏れるレベルに盛り上がってたんで、いや~ナカモトフィルムの凄さが世間一般に知れ渡っちゃったなァ~!中元監督が遠くの人になっちゃうなんて寂しいなァ~!!


『ユメミの半生』
監督:上田慎一郎
キャスト:松本穂香/小関裕太/石川春翔/濱津隆之/塚本晋也
エンターテイメントの楽しさの根源に触れていて、そしてその全てを肯定した上で背中を押してくれる上田監督らしい優しさに溢れていて素晴らしかった…!やっぱり上田監督の本質は心がぽかぽかするような優しさなんだよな~。

閉館が決まったミニシアターで監督志望の中学生が映画を観に行ったら、新入りのスタッフ・ユメミから、まるで映画のような不思議で壮大、荒唐無稽な半生を聞かされるお話。
ユメミの半生ってのは、要は映画の歴史そのもの。例えば子供の頃は声が出なかったのはトーキー映画、声が出るようになってからは画面が突然色づくのはカラー映画の台頭、その後はどこかで観たことのある恋愛、スパイ、カンフー、アクション、SFジャンルごっちゃ混ぜで軽やかに語られていき激動すぎるにも程がある人生になっているのが楽しい。
それぞれの時代に合わせた画面効果やパロディを随時挿入していくのは、大林宣彦監督の遺作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』を彷彿とさせる演出でニヤリとさせられます。
その上で「この続きは君たちが創る」として、未来の創作者たちに託す部分に上田監督の優しさが詰まっています。コロナ禍で色々疲弊してしまった創作者達に、トーキーからMCUまでの映画の楽しさを改めて伝えて激励しているんですから、『DIVOC-12』の理念に一番則した骨子の作品と言っても過言ではないでしょう。

あと舞台に見覚えあるな~って思ったら『カメ止め!』の聖地であり、数多くのインディーズ映画を世に排出している池袋シネマ・ロサの地下1階じゃないですか!!しかも、そこのオーナー役が『鉄男』などのインディーズ映画で評価を集め、今や日本を代表する映画監督にまで飛躍した塚本晋也というのもニクい!!
とことんこの続きを創る人達への応援に満ち溢れていて、勇気の貰える快作です。


・藤井チーム「成長への気づき」→個人的には「詩情」
藤井監督のみ今年の『ヤクザと家族 The Family』を観たチーム。
このチームだけテーマが「成長への気づき」とやたら具体的ですが、結局「成長…?」「気づき…はある…のか…?」とやっぱりよくわからない印象が強いです。
というより、作品全体が寡黙だし演出がかなり抒情的なため、どちらかと言うと「考えるな!感じろ!」タイプが多い印象。僕はちょっとこの手の観念的な作風が苦手なため、正直なところ「うーん……」って感じの作品が多めかなァ……
裏テーマはおそらく「時間」。『タイクーン』が顕著だけど、時が過ぎて変わってしまったモノや、コロナ禍を経て奪われた時間や、これからの時間に想いを馳せる感じでして、映画の〆へと極々自然に移行できたのではないでしょうか。


『流民』
監督:志自岐希生
キャスト:石橋静河
全体的に観念的な作品が多い藤井チーム作品の中では一番考察しがいがあって、自分なりの答えを出せたので面白かったです。
ボロボロの傘を持って一人旅する女性が、チェックインしたホテルで「どの部屋も同じだよ」と言われて渡された鍵を使って部屋に入っていくも、どこも誰かに占領されていて居心地が悪く、次から次へ全く違う部屋へと移動していく話。
おそらく、部屋は人間同士のコミュニティを表していて、旅する女性はそのどこにも馴染めず孤独でいる人なのでしょう。ホテルに入った時は「ホテル以前にあった家」のことを訪ねていますが、こうした過去すら感じの悪い受付に無視される始末なので、本当に居場所がない。
混沌とした「部屋」巡りを続けた結果、ホテルから転がり出ることになった女性の取る行動が、果たして善なのか悪なのか。最初に受付が「今度負けたらあの馬ブチ殺してやる」とボヤいていたことを考えると、ラストの女性の行動は善を取ったと言えるでしょう。


『タイクーン』
監督:林田浩川
キャスト:小野翔平/窪塚洋介
わっかんねェ~~~~~……
観念的なお話が多めな藤井チームの中で最も観念的であり、本作品群の中で一番よくわからなかった作品です。
中華街で覇気もなく働き、流されるままに高級腕時計を買わされた男が、普段使いしていた時計を川に落とし、それを探している内に出会った川沿いの大きな料理店「Tycoon」オーナーの男と共に船上で一夜を過ごすお話。
時計を印象的な小道具にしている以上、「時間」がテーマとして存在している筈なんですが、窪塚洋介の何者とも取れるよくわからない存在にはぐらかされて、考察自体を難しくしています。
無理くりに解釈するなら、これ「浦島太郎」なんじゃないですかね?水辺で出会った窪塚洋介が亀で、Tycoonは将軍様がおわすほどに立派な場所ってことで竜宮城。そして最後に陸に上がったら開けなさいと言って手渡したのは紛れもなく玉手箱です。結局、玉手箱の中には男が落とした時計が入っていたのですが、これが多大な時を奪われた浦島太郎の暗喩になるのですよ!!
……で、浦島太郎だから何?と言われたら、途端に言い淀んでしまうのだけれども。誰か解説お願いします……


『ココ』
監督:廣賢一郎
キャスト:笠松将/円井わん/渡辺いっけい
12作品中、唯一作中世界がコロナ禍であることが明言されている作品。コロナ禍での創作応援を目的にした企画なのに意外ですね。
しかし、マスクを付けている人が一人もいなかったりする辺りのディテールの甘さは片手落ちのような気もする。とは言え、緊急事態宣言前辺りってマスク着用ってみんながみんな守っていたワケでもないんでしたっけ?もう既にコロナ禍の常識に認識が置き換えられている感じなのが嫌ですね……
自分が望まれて生まれたと感じていない男が、関係を持って妊娠してしまった女性に冷たくしてしまったり、コロナで自分が目指す道が閉ざされたことで考え直して修復しようとする話。
奔放な肉体関係やそれに責任を持たない男に、冒頭で引用される詩など、何となく純文学的な感じがしますが、まあ本当男が身勝手すぎるのであまり感情移入できないよね……世界観は現実に一番根差しているのに、一番「ふーん」って無関心さで観ちゃった……


『名もなき一篇・アンナ』
監督:藤井道人
キャスト:横浜流星/ロン・モンロウ
実質的なエピローグの役割を持つお話であり、写真集、あるいはMVのような形で進む男と女の会話劇。
横浜流星と、死者なのかあるいは幻なのかよくわからない希薄な存在であるアンナという女とが京都、沖縄、北海道に次々ジャンプしながら会話を続けていく。日本語と中国語とが交互に話されていくサマは『ドライブ・マイ・カー』的でもあります。
ストーリーがあるというより、詩の朗読を交互に続けている感じなので、美男美女と各名所の美しさを堪能しながら、ゆったりと体感する作品でしょう。
中々希望の見えないコロナ禍に光を差し込ませる最後のフレーズから、エンディングに繋がる部分が特に美麗です。



……という感じで、まあ12人の監督による短編集なのでつまるつまらない、合う合わないの差はそれなりに激しいものの、今の時代だからこそ発信した意義は十分にあると言い切れる作品群ではないでしょうか。
思うに、やっぱり変に「コロナ禍を投影した作品であること」とかの縛りを入れなかったのが良かったと思うんですよね。こういった枷がなかったからこそ、個々人の個性を爆発させて、多種多様な作品に出会えるきっかけにもなったワケだし。
ただ、僕としては上田監督や中元監督といった元々推している人の作品が一番楽しめたという元も子もない結論に至ってしまったワケだけれども……それでも彼らの作品をそのまま楽しめたのは、緩い誓約の下で好きに創作していたからこそ。彼らの自由な創造心があれば、映画の未来は明るいということを知れただけで儲けもんでしょう。