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ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最期のクレセントのレビュー・感想・評価

4.8
さあ、今夜のスペシャル・ゲストの登場よ。進行役のマイケルの妹コニーは集まったコルレオーネ家の人々の前で紹介した。今夜はマイケルが主催する叙勲記念パーティ。ジョン・フォンティーン!そう、彼はあのフランク・シナトラがモデル。今やアメリカきっての大御所歌手。その昔先代のドン・コルレオーネに助けられ、それ以来の永い付き合い。皆は大喜びだった。静かになった会場。彼は甘い声で歌い始めた。TO EACH HIS OWN。(仮訳:それぞれに)♪♪バラは太陽と雨とともに。そうでないと素敵な約束は果たせないから。人はそれぞれに。私にとってはそれはあなた。歌詞と歌は一緒。だから夢は二人のもの。一人では何の役にもたたないから。私にはあなた。炎には輝きが必要。ドアを開けるには鍵が必要。わたしにはあなたが必要。あなたが触れるだけで最高。ふたりの唇はキスのために。そうでないと愛の意味がない。ひとはそれぞれに。あなたはわたしにとってただ一人の人。わたしのものを見つけた。それはあなたはわたしにとってただ一人の人。♪♪実はこの役、本物の歌手アル・マルチーノが演じている。好きな歌手でこの歌も彼の持ち歌。そしてこの曲はマイケルの大好きな歌。ジョニーは彼に向けて歌いかけた。まるでマイケルの気持ちを知っているかのように。ドアを隔ててジョニーの歌声が遠くに聞こえてくる。ここにはマイケルとケイだけ。元気?ええ、あなたは?子供たちは大きくなった。メアリーは大好きだ。ねえ、アンソニーのことで話があるの。久しぶりに逢う二人。ドアの向こうから聞こえてくる懐かしい歌声。遠い昔の甘くほろ苦い思い出。二人は心が揺さぶられる想いがしていた。これはほんのワンシーン。晴やかなパーティと家族のだんらん、そして長い時を経て再び出会うふたり。ジョニーの歌声と共に鮮やかに蘇った再編集による新しい映像。観ている自分も遠い昔のアメリカ時代の懐かしくセピア色した想い出が走馬灯のようによみがえる素晴らしい演出の再現となった。愛を語らせてもコッポラは生きている。
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