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プリズナーズ・オブ・ゴーストランドのbackpackerのレビュー・感想・評価

2.0
こ、これは……。
作った瞬間からカルト映画化する宿命を背負っていた作品ですが、出来栄えはお世辞にもイイとは言えない気がする……。
園子温監督のハリウッドデビュー作は、我らのニコラス・ケイジ(以下、ニコケイ)が主演と聞いて、期待値うなぎのぼりで鑑賞しましたが、正直拍子抜け。
途中で席を立つ人がちらほらいましたが、それも致し方なしか……。

そもそも園子温が監督という時点でイカれた作品になるんじゃないかと想像していましたが、案の定情報が出れば出るほど、「こいつはCRAZYな映画になるぞ……」と確信を深める有様。
製作秘話?や裏話?事項も面白く(例:ニコケイと園監督が新宿ゴールデン街で盃を交わす)、ニヤけずにいられません。


肝心の作品そのものは、正直たいした仕上がりとは思えませんが、良くも悪くもヘンテコでボンクラな映画です。

「わけわかんねぇ!」と叫びたくなるような意味不明さはないのに単調でまとまりなく、筋道立っているようで"そんなものはない"ストーリー。
過去と現在が交錯したと思いきや別にどうでもよかった展開。
彷彿とさせるモチーフが直接的に出て来ちゃっても深堀しない姿勢。
熱いアジテーションと準備をしたけど放置。
唐突、藪から棒、意味のある無意味、絢爛豪華なくせにチープ、奇っ怪な割に不気味ではない……等々挙げだしたら切りがないあらゆる要素を、大鍋でごった煮にして、ヘンテコで危険そうな反応が出ているのを傍目に、何もせず放置し、酒飲みながらボーッと眺める、そんな映画です。
要するに、「これでもか!と過剰な程全盛りしたのに、どの要素も宙を漂った挙げ句、霞の如く消えていった」ような、不思議な映画でした。

もっと強固な主軸と、それをしっかり補強する柱があれば、ここまでバラバラまとまらない内容にはならなかったんだと思いますが、きっとわざとそうしなかったんでしょう。
どうしようもなく陳腐でチープなカルトディストピア風ウェスタン時代劇ワールドに、ニコケイを放り込んで煮詰めていく、それこそが目的、それがやりたかっただけ、そんな気がしてなりません。
まさしく現代の狂気、和製東西融合の圧倒的カマボコファンタジーぶり。最高。

それと同時に、西洋人がみる日本像を日本風にアレンジして映像化しているのが素晴らしい。
すなわち、"不気味で調子外れで極彩色な電光看板輝く、ゲイシャ・フジヤマ・スシ・ジャパン"のような、いわゆるハンバーガーニンジャ風な世界観を、キッチリ日本流に描いている点が、ジェネリックされ再生産されたジャパンとしてとても完成せれていると思えるのです。
クールジャパン政策担当の経産省の参事官相当クラスには、全員に見せたほうがいいですよ。「世界が見てるジャパンはこう(クールジャパン)じゃねえんだわ。こっち(ジェネリックジャパン)なんだわ」ってね。
(クールジャパン構想が一概に駄目と批判しているわけではありませんが、現状はチグハグで的外れなことばっかりやってますからね……。)

とりとめのない感想文になりましたが、総括。
「ニコケイはイイぞ」
「ジェネリックジャパンはイイぞ」
ついでに「坂口拓の殺陣と血しぶきはイイぞ」
ということです。お粗末様でした。

なお、撮影場所は滋賀県の彦根市が中心となっているとのこと。ガバナーの格好して聖地巡礼しよう!

【今回のニコケイ目玉シーン】
・銀行強盗開口一番「バンザイ!」
・時間がないのに反骨精神むき出しで、ママチャリに跨がり出発
・左玉を爆破された際の「お"っ"ほ"ぉ"」の唸り声

【私的ニコラス・ケイジ年表】
ーーキャリアハイ期ーー
1995年:『リービング・ラスベガス』
1996年:『ザ・ロック』
1997年:『コン・エアー』『フェイス・オフ』(最盛期)
ーー玉石混合期ーー
2000年:『天使のくれた時間』
2002年:『アダプテーション』
2004年:『ナショナル・トレジャー』
2006年:『ウィッカーマン』(ラジー賞ノミネート)
ーーキャリア低迷期ーー
2007年:『ゴーストライダー』(ラジー賞ノミネート)
2010年:『魔法使いの弟子』
2011年:『デビルクエスト』等(当年全出演作ラジー賞ノミネートの偉業を達成)
2016年:『俺の獲物はビンラディン』
ーー俺ジナル・マイウェイ期ーー
2018年:『マンディ地獄のロード・ウォリアー』『トゥ・ヘル』
2019年:『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』
2020年:『アース・フォール JIU JITSU』
2021年:『ウィリーズ・ワンダーランド』『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』←NEW!!
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