たにたに

カラーパープルのたにたにのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.8
✨2024年16本目

スピルバーグが映画化してから約40年の時を経てミュージカルとして再映画化。
悲観で苦しくも感動的な物語がスピルバーグ版だとすれば、今作は比較的ライトに楽しめるし、音楽の力もあって、かなりエネルギッシュで見応えがある。

二人の姉妹が引き離され、姉であるセリーは父の言いなりで(売られて)、DV夫のミスターの妻となる。
セリーは自身の気持ちを述べることはしない。幼少期の妹と遊んでいたあの素敵な笑顔も出さない。
大人になった彼女は"夢"を持つことをしない、というか許されない状況だったのだ。

そんな彼女が出会う二人の女性。
ミスターの憧れシャグ、そしてミスターの息子嫁ソフィア。
シャグは世界的な歌手であり、自信にみなぎるまさにスターの出立ち。セリーに興味を持ち始めると、自分を取り戻すことの大切さを伝える。蓄音機の大セットは素敵でした。

ソフィアはパワフルで、思うことをズバズバ述べるタイプ。ミスターの息子ハーポを完全に尻に敷いている。ミスターはそれを良くは思っていないのだが、彼女のハッキリとした物言いはセリーの感情を突き動かした。

カラーパープルにはいくつかの名シーンがあって、スピルバーグ版と同様に見せ所としている。

冒頭の手遊び。
シャグの歌唱。
ソフィア復活の終盤の食事シーン。
手紙。
カミソリをミスターの首に当てる瞬間。

それに加え、ミュージカルとしても公演されているゆえ、オリジナル曲も映画内で使用。
ラストの楽曲は圧巻。
セリーは若くして子供を産み、愛す間も無く引き離されていた。自分の人生を取り戻すことすらもままならないのに、心のどこかでは子供達との再会を願っていた。
彼女が必死に生きてきたのは愛する人がいるからなのだ。


監督自身も述べているように、ミスターにも救いの手を差し伸べている脚本になっている。つまりは、ミスター自身の今までの行いが間違っていたのだと反省させている。
ただの悪役としてではない。ただの嫌なやつとして終わらせてしまうのは簡単だ。こうした後悔の気付きを得ることで人はまた次に進めるはずなのだ。
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