平野レミゼラブル

地獄の花園の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

地獄の花園(2021年製作の映画)
3.4
【結論「理解ある彼くんをブチ殺せ!!」】
再びイオンシネマワンデーパスを用いての映画三昧を敢行。その内の1本目。
時はOL戦国時代。一騎当千の戦闘力を誇るOL達は各社派閥(シマ)を巡っての血で血を洗う抗争(カチコミ)を繰り広げていた。本作は会社の制服(スーツ)を戦装束(トップク)で覆う狂戦士(バーサーカー)達の元に舞い降りた一人の戦乙女(オフィスレディ)の死闘を記録した銀幕映像(エイガ)である!!決めようか、どちらが生存(いき)るか、死滅(くたば)るか——

……とまあ、あらすじや予告映像を観た通りに不良(ヤンキー)映画の悪童(アクタレ)共をOLに置き換えた模倣(パロディ)作品であり、コテコテの喜劇(コメディ)映画ッス。というより、最早『女ビーバップ』『女ろくでなしブルース』『女クローズ』とでも呼んでおけばいい感じの作品で、実際作中でもこうした作品群が並べられて崇拝(リスペクト)されているッス。先人(パイセン)達の偉業、真実(マジ)パネェッス。

荒唐無稽極まっていますが、本作の一番面白いところはツッコミ役が不在なところ。
いや、そりゃ狂言回しの一般人(カタギ)のOL直子(永野芽郁)が心中で何度も(ヤンキー漫画のシチュエーションかよ)って突っ込んではいますよ?でも、OL同士が殴り合ってロッカーに叩きつけられたり、特攻服(トップク)着込んで会社の廊下で抗争始めてもお咎めなかったり、そのクセ外で他社のOLを袋(フルボッコ)にしたら傷害罪で逮捕(パク)られたり、でも解雇(クビ)にならず即職場(シャバ)に復帰したり、他社との抗争結果次第で会社ごと傘下(シャテイ)に加わったりといったそれ以前の世界観には一切のツッコミが入りません。みんな当たり前のように受け入れて無視(スルー)している。そんな異常空間が徹底されている。

だからこそ、OLどものヤンキーモードとOLモードのギャップのあまりの落差がいちいち笑える。凄いヤンキーヘアスタイルで電話応対したり、コピー機使ってるだけで面白いし、給湯室で「誰々をシメるか…」なんてブッソーな話しておきながら「最後の人、換気扇切っておいてね~」なんて普通のOLに戻るとことかツボ。
ここら辺、リアクション要因を用意していなかったが故の勝利でして、イイ感じに鬱陶しくないレベルで笑えます。でも、そうなってくると気になるのは直子が「ヤンキー漫画だったら~」みたいなモノローグをやたら挟み込んでくるとこなんですよね。これが完全なノイズで邪魔だな~って思っていたんですけど……嗚呼なるほど……このモノローグの持つ意味はこれか……

そんな感じで荒唐無稽ギャグでいながら、意外に構成が巧いです。ヤンキー映画の文法に則りつつも、時々外しを入れ、要所要所で軌道修正していく安心と外しの併せ技です。
ただ、ギャグは鬱陶しくないレベルとは言ったものの、途中途中コントレベルのネタになる時があってそこは流石に鬱陶しい。特に遠藤憲一演じるOL(!)「魔王」赤城涼子が始める民放バラエティめいたギャグは全て邪魔。「地上最強のOL」鬼丸麗奈の武勇伝をフリップ付で解説するとこなんか使うネタが古すぎるし別に面白くもないし。
でも遠藤憲一のOL姿は最高でしたね……脚が長いし、白いし、ツルツルだし……使う技の卑劣さ含めてOLというより妖星のユダだったけども。

あっ、アクションは全く期待しない方がいいです。全然動きに迫力がないのをエフェクトやCGで誤魔化している感じなんで。ハイローとかるろ剣とか邦画アクションも凄いことやってくるし、そこら辺もう少し凝ってくれても…とは思いますが、まあコメディ映画にそこまで求めるものではないか……

あと女優さん達もなんか全体的に照れが見える感じではあったんだよなァ~。もう少し吹っ切れて欲しいって言うのは贅沢でしょうか?
川栄李奈さん演じる「狂犬」佐竹紫織なんかは、無理してイキがってる小型犬っぽさが可愛かったから結果オーライですが。

言ってしまえばコントの延長線上にあるようなオフザケ映画であり、後に本当に何も残らない潔すぎる作品です。絶賛するほどではないし、作品を通して伝えたい何かを感じるワケもない。
それでも本作から何か無理矢理現代人(パンピー)に向けた宣戦布告(メッセージ)を読み取るとするならば……まあそれは「理解ある彼くんをブチ殺せ!!」でしょうね。真実(マジ)で糞ったれ(ファック)ですよ!!な~~~にが、「でも私には理解ある彼くんがいますから」だ!!斃れ雌豚がァァァアアア(ファ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ック)!!!!!