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クライ・マッチョのYYamadaのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.5
~脱「勧善懲悪」の「新西部劇」~
【ネオ・ウェスタンのススメ】
『クライ・マッチョ』(2021)

◆本作の舞台
 テキサス→メキシコ

〈本作の粗筋〉 公式HPより抜粋
・アメリカ、テキサス。ロデオ界のスターだったマイクは落馬事故以来、数々の試練を乗り越えながら、孤独な独り暮らしをおくっていた。そんなある日、元雇い主から、別れた妻に引き取られている十代の息子ラフォをメキシコから連れ戻してくれと依頼される。犯罪スレスレの誘拐の仕事。それでも、元雇い主に恩義があるマイクは引き受けた。
・男遊びに夢中な母に愛想をつかし、闘鶏用のニワトリとストリートで生きていたラフォはマイクとともに米国境への旅を始める。そんな彼らに迫るメキシコ警察や、ラフォの母が放った追手。先に進むべきか、留まるべきか? 今、マイクは少年とともに、人生の岐路に立たされる…。

〈見処〉
①誘拐から始まった少年との出会いが、
 二人の人生を大きく変えてゆく――
・『クライ・マッチョ』は、2021年に製作されたネオ・ウェスタンドラマ映画。
・落ちぶれた元ロデオスターの男が、親の愛を知らない少年とともにメキシコを旅する中で「本当の強さ」の新たな価値観に目覚めていく姿を描いた本作は、監督・製作・主演を務めるクリント・イーストウッドの監督デビューから50年、40作目となるアニバーサリー作品である。
・本作では多数の動物が出演。雄鶏「マッチョ」の撮影のため11羽の鶏が用意され、また、1992年に出演した『許されざる者』以来のイーストウッドによる乗馬するシーンも印象的である。

②50年に亘る本作製作の旅路
・本作は元々、1970年代初期に映画用脚本「Macho」として執筆されながら、発注元の20世紀フォックスから2度にわたり却下されていた企画。
・その没案を作者のN・リチャード・ナッシュが小説として書き直し、1975年に『クライ・マッチョ』のタイトルの小説にて出版されると好意的な評価を得たため、再び複数の映画スタジオに売り込まれる。
・1988年には、当時58歳のクリント・イーストウッドに出演を持ちかけられたが「主人公を演じるには、自分は若過ぎる」と出演を辞退。
・1991年には、ロイ・シャイダー主演にてメキシコで撮影開始に至るも未完に終わり、その後のバート・ランカスターやピアース・ブロスナン主演の企画も不成立。
・2003年にはアーノルド・シュワルツェネッガー主演が内定したものの、直後に彼がカリフォルニア州知事に当選したため、しばらくの間、企画は保留。2011年、満を持して、州知事を退任したシュワルツェネッガーは『クライ・マッチョ』出演を発表したが、彼の不貞スキャンダルにより製作は中止となった。
・そして、最初の映画化企画から約50年が経過した2020年10月、『グラン・トリノ』『運び屋』の脚本を手がけたニック・シェンクとともに、イーストウッドが本作の監督・製作・主演を務めることが発表され、コロナ渦と最中の同年11月から撮影が開始された。

③結び…本作の見処は?
◎: 作中、終始温かい雰囲気に包まれた、孤独な老人と屈折した少年の交流は、まさにトゲのない『パーフェクト・ワールド』『グラン・トリノ』。まさかの老人の恋模様まで描かれ、90歳を超えても前進し続けるクリント・イーストウッドの最晩年を映し出す記念碑的作品。
○: 牧歌的なメキシコの片田舎。風光明媚な景色と穏やかなメキシコ村民とのふれあいが心地好い「滞在型」ロードムービー。
×: 面白くなりそうな雰囲気をずっと醸し出しながら、大きなピンチもなく、またエンディングの尻切れトンボ感も、脚本が弱いからだと思う。ハンカチ持参で「Cry Macho(男らしく泣け)」のつもりで鑑賞をしたが、感動ポイントはなかったのが至極残念。
×: 中盤の乗馬シーンはあからさまなボディダブル、193cmを誇った高身長の猫背となった姿……老いすぎたイーストウッドを見るのは辛く悲しい。あと15年早く本作に出演してくれていればと思わされる。