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ヤング・ハワイのFilmomoのレビュー・感想・評価

ヤング・ハワイ(1961年製作の映画)
3.9
①とるに足らない、とは「話題として取り上げる価値がない、議論に値しない」という意味だが、「ヤングハワイ」はつまらない映画ではない。今から57年前に作られた若者向けのこの映画は、今なお世界の旅行者の憧れであるハワイの魅力を伝えつつ、そんなリゾート地にいても楽めない、恋人とケンカした女の子の心情を綴りつつ、セミ・ミュージカル風にハワイでのバカンスを描いていく。もともとはサンドラ・ディー扮する「ギジェット」シリーズ(日本未公開)のスピンオフで原題は「ギジェット、ハワイへ行く」②シナリオがいい。一人娘を喜ばせようとして“サプライズ”でハワイ旅行をプレゼントする父親だが、娘のギジェットは、恋人のジェフと休暇を一緒に過ごせないのが嫌でふてくされる。父親は娘をまだ子供だと思っているが、娘はもう恋人からプロポーズを受けており、気持ちは両親よりも彼氏に向いている。娘を置いて二人で二度目のハネムーンを楽しもうとする母親。ネグリジェを身に着けてみたり、久しぶりにうきうきした気分になる。気を揉み娘に介入する父親と、娘はもう大人で自分たちがすることはないと考える母親。(この父親がいい味を出していて、しかもニコラス・ケイジそっくり)ギジェットはジェフに相談するが、ジェフにハワイの波に乗らないなんて(二人はサーフィン仲間)と後押しされ、女心を分かっていないと喧嘩別れしてしまう。それで一度はキャンセルしたハワイ行きの飛行機にギジェットは乗りこむことになり、母親は夫婦水入らずの旅でなくなりガッカリ顔を見せる。父親、母親、娘の思惑がそれぞれ描き分けられている。機内で知り合った娘アビーとギジェットは若い男の子たちの視線を集める。その中には歌手の色男エディーもいる。
だが、ハワイについてもギジェットは部屋で読書とひきこもる。ついに心配した父親は恋人のジェフを密かに呼び寄せる。普通はあり得ない展開だが、この時代独特の甘い雰囲気に包まれてディテールなどどうでもよくなってしまう。③後半の展開はジェフがハワイについてから。よりにもよって浜辺でキスするエディーとギジェットの姿の前に現れてしまったジェフはアビーに近づく。そして二人はそれぞれ相手にこれ見よがしに見せつけ、相手の嫉妬心を揺さぶる茶番劇に出る。またそれを見た父親がジェフに何をやっているんだと言い寄るが、ジェフは娘さんのことを全く理解していないと言い返す。アビーもまたギジェットに対する嫉妬心を燃やし、あらぬ噂を流して話をややこしくしてゆく。(この後、ギジェットとアビーのそれぞれ両親夫婦にもひと騒動が起きる)ミュージカルの要素をも取り入れ、ソフィスティケイテッドな歌が聴ける。この映画が製作された1961年は『ウエストサイド物語』がアカデミー賞を受賞した年。世界中の誰もがこの年はこちらの映画で決まりだろう。でもその陰で「とるに足らない」かもしれないが、このようなチャーミングな映画があったことは記憶に留めておいて損はない。
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